FUN'S PROJECT REPORT


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FUN'S PROJECT REPORT #0072019.09.26

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絵の練習方法から給与の現実まで!アニメーターのなり方とは?

アニメを作る仕事と言えば、何が思い浮かぶでしょうか? 監督や声優もそうですが、アニメーターや演出など他にも多くの人の手によってアニメは作られています。近年ではそんなアニメ制作の現場を描いたアニメ『SHIROBAKO』のヒット、連続ドラマ小説『なつぞら』などによって、アニメ制作現場に注目が集まるようになりました。

しかし、アニメ制作の仕事をするには、どうすればいいのか意外と知られていません。今回はそんな仕事の中で、“アニメーターになるにはどうすればいいのか”をテーマに、アニメーターとしてご活躍していた方にお伺いました。

アニメーターになるための絵の練習方法や、実際になるまでの道のり、そしてアニメーターを続けていくために必要なスキルとは、一体何でしょうか?

アニメーターになるには? 就職活動について聞いてみた

― 今回は“アニメーターのなり方”について伺いますが、小さな頃から絵を描くことが好きだったりしたのでしょうか?


そうですね。何かしら絵を描く仕事に就きたいと漠然と考えていました。

趣味でずっと絵を描いていたのでイラストにも興味がありましたが、偉大な先人達の作品を見てアニメーションとして動かすことに憧れたので、アニメーターになろうと思ったんです。

― そもそもアニメーターになるには、どのように就職活動をすれば良いのでしょうか?


基本的には普通の就職活動と変わらないと思います。ただ、仲介してくれるような便利な会社やサービスが見受けられなかったので、会社のホームページなどで行っている採用情報を集めて、応募していました。

― 応募する企業はどういう基準で選びましたか?


会社の雰囲気やどんな作品に参加していたかなど、自分の働く場所として合っているかを重視しました。もちろん、家から近いのも重要なポイントです。

あとは会社の規模感ですかね。アニメ制作会社には、元請けと下請けという種類があって、元請けはアニプレックスのような製作会社から実制作全般を請け負う会社、下請けは元請けからの発注を受ける会社になります。

基本的に元請けになると、日常系やアクション系など携わる作品の傾向が決まっていることが多いので、同じような仕事をしますが、下請けは規模が小さい分いろんな仕事ができます。どちらを選ぶのは好みといったところですね。

― 一般的な就職活動では準備の段階で一般教養の勉強などをしますが、アニメーターの場合は準備の仕方も異なるのでしょうか?


いわゆるポートフォリオ、自分の技量を示すための材料は必要になりますね。なので、私の場合は活動実績用にスケッチブックを一冊描いて、持ち歩いていました。

いろんなポーズの人間や、スポーツをしているところをいろんな角度から描いたりと、一枚の絵として成立するものではなく、アニメーションを意識した絵をたくさん描きましたよ。

― 選考ではなにが行われるのでしょうか?


主に実技試験と面接でした。椅子に人を座らせる動きや、複雑なポーズなど指定されたものを描いたりしました。

面接は一般的な就職活動よりはおそらくゆるく、好きな作品などを聞かれましたが、場合によってはアニメーターとしてやっていけるかどうかについて確認されたりもするそうです。本来はそこを保証してもらう為に会社に入るので、なかなかおかしな話ではあるんですが(笑)

面接はあくまで最低限の社交性や人間性を図るためのもので、重要なのは実技の方だと思います。

アニメーターの仕事とは(動画と原画)

― 選考を通過すると具体的にはどういう扱いになるのでしょうか?


大きい会社では社員として登用することもありますが、ほとんどは業務委託契約で、会社のスペースを借りて作業するような形態になります。

― アニメーターになると、最初はどんな仕事から始まるのでしょう?


最初は、“原画”というアニメーションのキーとなる絵の間をつなぐ、中割を描く“動画”という仕事から始まります。アニメ制作においては最後の方の工程になるので、スケジュールに余裕がないのですが、アニメーションにおける基本的なことを学ぶ最初の仕事になりますね。


▲アニメーション完成までの制作工程。レイアウトが決まったら原画、動画の流れで工程が進む。

― 動画の作業の面白い部分はどこですか?


アニメーションにおける最終設計をコントロールできるのは面白いと思いますね。ですが、原画をトレースしたり均一な線を引くことが求められるので、クリエイターとしてのオリジナリティは出しづらいかもしれません。

― 動画のお仕事のお給料はどのようになっているのでしょう?


動画の時は1枚単位で制作費を頂いています。相場は大体200円くらいです。私は動画を極めたわけではないのであまり参考になりませんが、1日20枚くらい仕上げていました。

― 動画の次はどのようなステップを踏むのですか?


基本的には動画から原画に上がるためのステップとして、第二原画と呼ばれるポジションにつきます。第一原画の人がレイアウトとラフで動きを描くので、それを清書したり、作画監督が修正を加えたものなど、直しが必要な原画を修正して動画に渡せるようにする仕事ですね。

そこである程度経験を積んでから原画を担当するようになります。どれくらいで原画をできるようになるかは人や会社にもよりますし、試験があるようなところもありますが、私の場合は3カ月くらいでなれました。

原画は一番やりたかったことなので、できるようになって嬉しかったですね。

― アニメーターの中でも花形のようなポジションなんですね。具体的には原画はなにをする仕事なのでしょうか?


どのキャラがどこにいて、なにをしているのか、といったシチュエーションや、台詞や尺といった指定があるので、それに合わせてレイアウトを決め、どういう動かし方するかを考えつつ、アニメーションのキーとなる絵を描きます。

言うなればアニメの骨組みを作るような作業で、クリエイターとしてのオリジナリティも発揮できる仕事ですね。 

― どのように工夫を凝らすのでしょうか?


立っているだけのシーンでも、棒立ちにさせるのと、片足に体重をかける立ち方にするのでは大きく印象が違います。それだけ小さなこだわりでもキャラクターが生き生きしてきます。

動きがあるシーンは腕の見せ所で、絵コンテの指示をどう解釈するかで仕上がりも変わってきますし、少しメリハリをつけるだけでもアニメーションとしての魅力がグッとでてきます。

そうした細かいこだわりがアニメーションを魅力的にする、言うなればキャラクターにどれだけ愛情を注げるかで工夫の度合いも見てとれると思います。

― より技術的な作業になると、やはり難しい部分もありますか?


画面のレンズ感や空間を意識することは、大事でありながら難しい部分ですね。シーンごとにどういう描き方が適切なのかを考えなくてはいけませんが、そうした空間的な意識を鍛えるにはやはり数をこなさないといけません。

クリエイターとしてのオリジナリティや工夫を凝らそうとすると、それだけ描かなくてはいけない枚数や細部のディテールも増すので、単純に作業量が増えて大変だったりもしますね。

― 原画のお給料はどうなっているのでしょう?


動画の場合は1枚単位で計算しますが、原画は1カット単位で計算していて、相場は大体5,000円くらいでした。

あまり動きのない会話だけのカットも、動きの激しいアクションでも同じ1カットとして計算するので、動画の時以上に仕事量にばらつきがありましたね。

― 動画もですが、かなり厳しいですね。


作業に対しての制作料の他に、拘束料というものもあります。

これは、この作品に関わる間は他の作業をしないという約束をするもので、専属契約みたいなものです。その分の費用を拘束料として貰えるので、大きな固定収入になっていました。

お給料周りは変動も激しく、大変ではあるのですが、魅力的なシーンを描いたりできるのはやはり楽しいのでなんとも代えがたい価値があるのもまた確かなんです。

― 原画からのキャリアアップにはどのようなルートがありますか?


原画マン(※1)として原画を貫くこともできますが、次のステップとしては担当話の絵柄や動きなどの品質を統一し、クオリティを管理する“作画監督”、作品全体の作画品質を管理する“総作画監督”が主なルートでしょうか。

演出的な技能を極めたい場合は、“演出”に進む場合もありますし、キャラクターを描きたい人は“キャラクターデザイン”を担当したりと、明確な規定がない分その先のキャリアの描き方も千差万別です。

※1:アニメーターの中でも原画を担当する人を「原画マン」、動画を担当する人を「動画マン」と呼ぶ業界用語。

アニメーターを目指すための練習方法

― アニメーターの視点から見て、最近感銘を受けた作品はありますか?


『Fate/Grand Order』の配信4周年記念映像はすごかったですね。

一般的なアニメとは違い、シネスコープという映画と同じ比率の画面を作っているのですが、その比率にマッチした映画的な描写がされているのがものすごいんです。

エフェクトをはじめとした撮影処理もすごいきれいで、アニメとは思えないシーンがいくつもあります。

アニメ的なキャラの見せ場を意識した構成も見事です。アップにして表情やアクションを見せているわけではなく、遠景でシルエットだけの登場だったりするのに誰がなにをしているかわかりますよね、これはかなり高度なテクニックです。

もちろんアップでの細かいアクションもすさまじい。コマ送りで見るとよくわかるのですが、緻密な動きを表現する上では、なにをどこまで描くかが重要になってきます。アニメーションとして動かすために、どこの動きを飛ばして描いているのかを注目して見ても学びが多いですね。

― 1からアニメーターを目指すとなると、磨くべきはどんなスキルになるでしょうか?


アニメは空間の中での動きを描写するので、それを意識したレイアウトが描けるかが重要になってきます。

また、人物の動きを表現するためにいろんなポーズが描けることも大事だと思います。

― スキルを磨くための練習はどうすればいいでしょう?


アニメとか映画とか、参考になりそうなレイアウトを模写すると良い勉強になります。

ポーズを描く練習はとにかくクロッキーを描くことです。スピードをつけることにもつながるので、当時の私は1日10ページくらい描いていました。

あとは、やはり自分の好きな絵であったり、アニメのシーンを模写することですね。実際にどのように動きをアニメに落とし込んでいるかが分かるので参考にしやすいですし、先人たちの積み重ねを知ることは大事です。

― アニメーターになった後、続けていくためにはどんなことが重要になるでしょうか?


総合的な上手さももちろん重要ですが、仕事を早くこなせることも欠かせない要素です。

クオリティを保ちつつ、スピードを上げる。スピードを上げることで、より多くの経験が積めるのでスピードアップはアニメーターを続ける上での必須スキルとも言えますが、実際に数をこなしていく中で、少しずつ養っていかなくてはならないのが難しいところです。

― クオリティとスピードといえば『SHIROBAKO』でも新人アニメーターの絵麻ちゃん(※2)がスピードを追い求めるあまり、仕上がりが雑になってしまって迷走するシーンがありました。こういった葛藤は実際にもあったのでしょうか?

※2『SHIROBAKO』のキャラクター一覧(外部サイト)


良い線をさらっと引けたらいいですが、現実はそう簡単にはいきません。優先すべきはスピードなのかクオリティなのか、そのバランスはいつまでも迷う部分ですし、迷走も挫折もたくさんありました。

ですが、アニメ制作は大勢でのチーム作業であることもあって、周りにたくさんのクリエイターがいます。そうした周りの人々の頑張りから刺激を受けて、自分も頑張ることで技量を2高めていくしかないですね。

― アニメーターを目指していた頃から、実際の現場まで貴重なお話をありがとうございました。最後に、これからアニメーターを目指す人たちに向けてメッセージをお願いします。


アニメーターを目指すための専門学校や養成施設なども増えましたが、基本的に頑張らないといけないのは自分なのでどこからでもアニメーターを目指すことはできます。


▲「アニメ私塾」が配信している動画

FUN' S PROJECT×動画工房が制作した「アニメータードリル」や室井康雄(※3)さんが主催している「アニメ私塾」のように、インターネット上にも勉強になるにコンテンツやコミュニティはたくさんあるので、それを真似するだけでもかなり勉強になりますし、ここまでお伝えしてきたようなことも参考になれば幸いです。

アニメ制作については、クリエイティブに関わる華やかな世界であると同時に、Twitterで賃金未払いの告発があったりと、たびたび炎上するような厳しい世界でもあります。

それでもアニメーターを目指し、続ける人がいるのは、なんといってもアニメーションが楽しいからです。なので、目指すための練習や勉強も、すべて楽しんでやってもらえればと思います。

※3:室井康雄:大学卒業後、スタジオジブリに入社。その後はフリーとして『ぼくらの』や『亡念のザムド』で作画監督、『セイクリッドセブン』や『銀の匙 Silver Spoon』では絵コンテ・演出を務める。


(取材・文:オグマフミヤ)


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