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FUN'S PROJECT REPORT #0082019.10.25

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アニメの作り方とは? 10分で分かる! アニメ制作工程と専門用語

アニメファンなら一度は目にしたことがある「動画」 「原画」 「撮影」 といったアニメ制作に関する専門用語。一つひとつの言葉の意味はなんとなく分かるけど、具体的な作業内容や、全体としてどうやってアニメ作品を完成させるのかと言われるとちょっと分からない……そんな人も多いのではないでしょうか?

そこで今回は主要なアニメ制作専門用語12個について、それぞれの意味をワークフローに沿って紹介します!

この12用語の意味と工程としての前後のつながりを知れば、アニメ制作を理解したも同然。それではさっそく早速見てみましょう!

企画や設定を作る「プリプロダクション(プリプロ)」について

1.企画【きかく】


実制作に入る前の企画段階の作業のことを「プリプロダクション(プリプロ)」と呼びます。プリプロの中でも最初に行われるのが「企画」です。

テレビアニメや劇場用アニメなど、多くのアニメは作品であると同時に商品でもあるので、原作付きかオリジナルかといった作品内容に関するアイデアだけが企画ではありません。誰を対象とする作品なのか、何で収益を上げるのか、掲載媒体は何か、どのような企業をパートナーにするのか、などのビジネス的な要素も必須です。

これらの要素を書面にまとめ、企業やクリエイターを巻き込んで制作プロジェクトを立ち上げ、作品を形にするのが「プロデューサー」の仕事です。

2.シリーズ構成【しりーずこうせい】


企画が通って予算がついたら、より具体的な制作の準備に移ります。

テレビアニメの場合、各話のシナリオはそれぞれ担当の脚本家が書きますが、その元となるシリーズ全体の物語の流れを設計する仕事が「シリーズ構成」です。単に「構成」と呼ぶこともあります。シリーズ構成は職種の名前であってそのような職業があるわけではなく、主に監督やメインの脚本家がこの作業を行います。原作がある場合でも、それをアニメシリーズに適した形にアレンジする必要があるため、“原作のストーリーそのままなので、シリーズ構成は不要”ということはありません。

同じシリーズ構成という役職でも、脚本家の選定を担当するかどうか、どの程度各話の物語に関与するかなど、業務内容はプロジェクトごとにまちまちです。

3.脚本【きゃくほん】


各話の物語を文字で設計するのが「脚本」であり、それを担うのが「脚本家」です。吉田玲子さん、小林靖子さん、會川昇さん、伊藤和典さんなど、多くの方が脚本家としてアニメ業界で活躍されています。中には岡田麿里さんのように監督になる方や、井上敏樹さんのように特撮番組やテレビドラマなど他のジャンルでも活躍されている方もいます。

同じ“文字による物語”でも小説とは構造が異なり、柱書き・セリフ・ト書きが明記されている必要があります。

4.絵コンテ【えこんて】


映像制作を始める前に、どういった映像をこれから作るのかをあらかじめ設計し、スタッフに共有するためのツールが「絵コンテ」です。コンテとは英語で“連続”を意味するcontinuityのことで、その名の通り絵によって映像の連続性=つながりを示した映像の設計図です。主に監督や演出家が描きますが、専門のスタッフ(コンテマン)が描く場合もあります。なお、「描く」ではなく「切る」「割る」と表現する場合もあり、統一はされていません。

絵コンテはあくまで設計図なので、必ずしも漫画やイラストのように視聴者の鑑賞に耐えるレベルの絵で描く必要はありません。マッチ棒人間や矢印でも、映像の設計意図が伝わるのであれば絵コンテとして成立します。

絵コンテに関する有名な専門書として『機動戦士ガンダム』の富野由悠季監督による『映像の原則―ビギナーからプロまでのコンテ主義 改定版』(キネ旬ムック、2011)があります。

この他、キャラクターデザインや小物デザインなどの「デザイン設定」や作中の色を決める「色彩設計」、物語で描かれるのはどういった世界なのかを設定する「世界観設定」などを用意した上で、次の「制作(プロダクション)」の工程に移ります。

原画、動画、背景美術などで映像を作る「プロダクション」について

5.レイアウト【れいあうと】


「レイアウト」もアニメ制作において重要な工程です。スタジオジブリは2008年から2018年まで『スタジオジブリ・レイアウト展』を日本全国で巡回展示していました。そのサイト内(外部サイト)の漫画資料「レイアウトとは?」では、レイアウトの概念と前後の制作工程について分かりやすく説明しています。

また、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の押井守監督の著書『METHODS 押井守「パトレイバー2」演出ノート』は、監督自ら各カットのレイアウトの意図を細かく説明しており、レイアウトの理解を深めるのに適した1冊となっています。

6.原画【げんが】


3DCGや映像編集に詳しい方であれば「キーフレーム」という呼称で馴染みがあるかもしれませんが、アニメ制作においては「原画」と呼びます。その名の通り、キー=鍵となるフレーム=コマのことです。

原画を元に動画が作られるためアニメーション制作において重要な役割を持ちます。

アニメーターのキャリアパスとしては後述する「動画」を担当した後に原画の担当になるケースが多いですが、作業工程としては原画の方が先になります。それぞれの担当者のことを「動画マン」「原画マン」と呼びます。

7.動画【どうが】


多義的な言葉ですが、制作ワークフローとしては主に原画と原画の間を埋める中割の作業を指します。

通常30分アニメ1話あたり3000枚前後(もっと多い場合も少ない場合もあります)の動画が必要になると言われており、非常に物量が求められる作業です。そのため動画マンには速く正確に線を引く専門的な能力が求められます。先述の通り動画から原画へとステップアップしていくケースが多いですが、作業内容が根本的に異なるため、動画専門で活躍し続ける方もいます。

もともと動画用紙に鉛筆で描くアナログ方式でしたが、現在はパソコンを用いてタブレット上で動画を描く「デジタル作画」を導入するスタジオも増えてきています。

完成した動画は「動画検査」(「動検」「動画チェック」)で問題がないかを確認し、彩色に進みます。

8.彩色【さいしき】


動画は基本的に線だけで描かれているので、映像作品にするには色を付ける必要があります。それが「彩色」または「仕上」と呼ばれる工程です。かつては動画に直接塗料で色を付けていましたが、現在は動画をデジタルデータとして取り込み、そこに色を付けています。

もともと専門性の高い業務で、『涼宮ハルヒの憂鬱』『響け!ユーフォニアム』の制作会社、京都アニメーションも設立時は仕上専門のスタジオとしてスタートしています。

色がついた一連の画像データは「仕上検査」(「仕検」「色彩検査」)を経て次の工程に移ります。

9.背景美術【はいけいびじゅつ】


動画には動くキャラクターなどが描かれますが、それとは別に背景となる絵も用意する必要があります。この工程を「背景美術」(もしくは「背景」「美術」)と呼びます。自社内で背景美術制作するスタジオもありますが、株式会社美峰、株式会社草薙、有限会社スタジオ風雅など、背景美術に特化したスタジオに制作依頼するケースが主流です。

レイアウトを元に、どのような背景美術を発注するかを書き込んだ指示書を「背景原図」と呼びます。

10.撮影【さつえい】


撮影の前段階として各種データが正しく揃っているかのチェックを行う工程を「撮出し」(「撮影出し」の略)と呼びます。それを経て各素材データを合成するのが「撮影」で、主に「撮影監督」がこの業務を行います。

かつては動画が描かれた「セル画」と背景美術を物理的に重ねて巨大な撮影台に設置し、真上からカメラで実際に1枚1枚”撮影”していました。現在はデジタル化に伴い、これらの作業はソフトウェア上での合成作業になっています。

また、動画や背景美術に描かれているもの以外の光やぼやけの表現など、映像効果を加える作業を「撮影効果」「特殊効果」と呼び、この工程で行います。なお、仕上げ作業の最終段階にも同名の工程がありますが、そちらを「特効」と略して呼ぶのに対し、こちらは略して呼ぶことはありません。

撮影はもともとこの後のポストプロダクションに属する工程でした。作業のデジタル化に伴ってプロダクション業務と並行・兼務するケースが増えたことで、現在ではプロダクションの工程として捉えることが増えています。

音響、編集を経て完成!「ポストプロダクション(ポスプロ)」

11.音響【おんきょう】


セリフの音声やBGM、主題歌や劇伴などは、アニメのプロダクション業務と並行して専門の音響会社によって収録されます。この工程を「音響」と呼びます。ここでは音響監督やプロデューサー、監督が中心となって、声優のオーディションやアフレコ、作曲家への楽曲発注や効果音の制作、各音声データを映像に合うように仕上げる「仕込み」、ダビングなどの作業が行われます。

この工程については、『けものフレンズ』『ケムリクサ』のプロデューサーであり、芸能声優事務所ジャストプロの社外取締役でもある福原慶匡プロデューサーの著書『アニメプロデューサーになろう! アニメ「製作(ビジネス)」の仕組み』 (星海社、2018)に詳しく紹介されています。

12.編集【へんしゅう】


ここまでの工程で映像や音声の素材は完成しましたが、それは実写で言えばカメラで撮影されたままの状態のフィルムです。それらを切り貼りし、適切な音をあてて映像作品として仕上げるのが「編集」(カッティング)の工程です。「編集マン」と呼ばれる専門家や演出家、監督などがこの業務を担います。

アニメの場合、基本的には絵コンテにすべての映像素材と尺の指示があるので、絵コンテ通りにカットを並べれば映像が完成するはずです。しかし、実際に完成した映像を確認した上で、視聴者が違和感なく作品を楽しめるように調整するのが編集の仕事です。そのため、絵コンテの指示からカットの尺の長さや順番を変えることもあります。

完成した映像原盤と音響原盤を1つにし、最終的な映像作品として完成させるのが「ビデオ編集」という工程です。この作業によってマスターテープ(「完パケ」)が完成し、テレビ局などに納品されます。撮影以降、マスターテープ完成に至るまでの工程を「ポストプロダクション」と呼びます。

おわりに

紹介した作業工程はすべてテレビアニメの第1話が放送されるまでに必要なものです。そして第2話以降も、プリプロ以外のほぼすべての工程を毎週繰り返すことになります。テレビアニメの制作ってものすごく大変なんですね。


(文 いしじまえいわ)


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