FUN'S PROJECT REPORT

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FUN'S PROJECT REPORT #0062019.09.26
Live2Dの使い方から上達のコツまで! 現場のクリエイターに聞いてみた
2Dで描いたキャラクターがまばたきしたり手を振ったり! 描いたイラストをそのまま動かせるアニメーション制作ツール「Live2D」は、近年ソーシャルゲームやVTuberなど、さまざまな領域で活用されています。
Live2Dには無料版もあり、チュートリアルが豊富で個人で作品を作るクリエイターもたくさん現れていますが、実際にイラストを思うように動かせるようになるにはどうすれば良いのでしょうか?
今回は、実際にLive2Dのお仕事をされているLive2Dクリエイターにリアルなお仕事事情やLive2Dの良さ、そして魅力的な動きを産み出すための上達のコツを聞いていきます。
ソーシャルゲームにVTuber!お仕事でのLive2Dの使い方は?
― 本日はよろしくお願いします。今回はLive2Dについてお伺いしていきたいのですが、そもそも普段はどのようなお仕事をされているのでしょうか?
ゲームを中心に3D制作の仕事をしています。3D制作にはモデリングやマテリアル設定などの工程があるんですが、私はアニメーションを得意としているので、3Dのように2Dイラストを動かすLive2Dを使った案件も担当することもあります。
― Live2Dを使うお仕事のジャンルはどのようなものがありますか?
ソーシャルゲームの案件が多いですね。コンシューマーゲームの案件もときどきあります。近年ではVTuber系の案件も増えましたし、他にはCMや広告用の動画素材としてLive2Dを使いたいなんて相談もありますよ。
― 最初にLive2Dを使った仕事をされたのはいつ頃でしたか?
実際に触ったのは今の会社に来てからなので、仕事として始めたのはちょうど2年くらい前になります。
もともとはアニメ制作の3D周りをお手伝いする会社にいて、モーションなどの技術を磨いていました。その時はLive2Dを使っている社員を隣で見ているだけで、自分が関わることはなかったですね。
― 3Dクリエイターとしての知識や経験はLive2Dでの作業にも活きていますか?
どちらかと言うと、3Dの知識が活きるのはSpine(※1)の方でしょうね。Live2Dの開発コンセプトが“イラストをそのまま動かせる”ことなので、自分の描いたイラストを動かしやすい作りになっているんです。
なので、3Dとの共通点はあることにはありますが、知識は必須ではないですし、3DができないとLive2Dができないなんてことはありませんよ。
※1:Spine Live2Dと同じように2Dイラストを動かすことができるアニメーション制作ツール
Live2Dでイラストを動かすために必要な3つの工程
― Live2Dの作業工程はどのようになっているのでしょうか?
イラストを用意した上で、イラストのパーツ分け、モデリング、モーション制作の3つの工程があります。
順番としては最初にパーツ分けをしないといけないんですが、最終的にどのようなモーションをつけるかによってパーツ分けも変わってくるので、総合的な視点で作業を進めないといけません。
最近では求められるクオリティが上がってきて、繊細に動かすため「細かくパーツを分けてください」という要望を受けることも多くなりました。
― もともとはイラストを動かすためにLive2Dが必要だったのが、最近はLive2Dで動かすために緻密なイラストが必要という逆転が起きているのでしょうか?
そうなってきているとも言えますが、“Live2Dのためにイチからイラストを描く”というよりは、“Live2Dのためにイラストを描き足す”という考え方ですね。
商業レベルで求められるクオリティは確かに上がっていますが、Live2Dのもともとのコンセプトである“ 描いたイラストを動かせる”という部分は変わらないので、緻密じゃないから動かせないなんてことはなく、基本的にはどんなイラストでも動かせます。
複雑なポーズのついたイラストを動かすのは確かに大変ですが、その際に重要なのがパーツ分けや描き足しといった作業です。
例えば顔の側面のような、イラストの段階では描かれていないけど、横を向かせたいなら必要になってくるパーツがあると、そこは描き足さなければなりません。
― Live2Dの強みはどのようなポイントにあると思いますか?
絵を動かそうとしたら、これまでは手描きのアニメしか選択肢がありませんでした。しかし、アニメ制作は工程も多く、絵も複数枚描かないといけませんし、一人でやるのがどうしても難しい分野だったんです。
ですが、Live2Dはイラスト一枚あれば動かすことができますし、動かす工程も一人でできるので、簡単に絵を動かすことができます。もちろん、こだわろうと思えばどこまでもこだわれるのですが、動かすだけなら一人でもできる手軽さはなによりの強みでしょうね。
― 同じようなツールとしてSpineもありますが、イラストを動かすツールとして比べた時のLive2Dの優位点はどこにあるのでしょうか?
Spineは3Dモデルを動かす時のように、ボーンを設定してパーツ分けしたイラストを動かすツールなので厳密には異なるものなんです。
表現で比べるとLive2Dは立体的に動かすことが得意なので、顔や体を横に向けたりするならLive2Dの方が良いと言えますが、どのツールを採用するかは目指したい表現はもちろん、システム面など、他にもいろんな条件が絡んできます。
ですが、最近はLive2DでSpine的な表現をしたい、もしくはその逆をといったような相談を受けることも増えてきたんです。
― となると、似たような使われ方をして、お互いの強みも混じってきているのでしょうか?
近年だと『Shadowverse』や、『アイドルマスター シャイニーカラーズ』がLive2D的な表現をSpineでやっているのですが、頭身の高いキャラクターはLive2Dの方が動かしやすかったりと、得意な事が結構違うのでツールとしての差別化はできています。
現場のクリエイターが語る「このLive2Dがスゴい!」
― クリエイターから見ても「このLive2Dのここがスゴい!」と思ったものはありますか?
最近だとLive2D社さんが公開していた子供が狼に変身するデモ(外部サイト)や、アプリゲームの『ガール・カフェ・ガン』はスゴいと思いましたね。
特に『ガール・カフェ・ガン』の公式サイトを見てもらえればわかると思いますが、アニメらしいメリハリのついた可愛い動きをしていて、これをするためにはかなり細かいパーツ分けとモデリングが必要になるんです。
本来、こうしたアニメ的な可愛らしさの表現は日本の得意分野だと思うんですが、これを中国の企業がやっているのは驚異的でした。
― 海外の技術レベルもそれだけ上がっているのでしょうか?
『アズールレーン』も衝撃的でしたし、海外のレベルも目に見えて上がっていますね。もともとアニメ制作の下請けとして中国や韓国があったわけで、そういうところから可愛らしいアニメーション表現力が培われていったのかもしれません。
― 現実的なところで言うと、お仕事としてのLive2Dの案件は増えていますか?
時期によってまばらではあるのですが、全体として増えてはいると思います。VTuberの登場以降大きな波があって、一回収まったのですが今また新しい波がきている感覚です。
最近では中国でVTuberを作りたいという相談もあったりするので、そういった海外の需要も合わせるとまだまだ増えていくんじゃないでしょうか。
― VTuberの登場はやはり市場にとって大きな変化でしたか?
そうですね。それまではLive2Dが使われるのはゲームがメインだったんですが、VTuberの登場で新しく大きなジャンルが生まれました。
キズナアイやミライアカリのような立派な3Dモデルを作ろうとすると、やはりお金も時間もかかるのですが、Live2Dはもっと手軽にできるので需要も増えたのかなと思います。
実際の期間で言うと、イラストやデザインは別として、3Dモデルは一体作るのに1ヶ月半から2ヶ月ほどかかりますが、Live2Dは1週間から2週間でできます。
とはいえLive2Dも複雑になってきていて、かかる時間も増えたりもするのですが、まだ3Dよりは手軽な選択肢です。
― VTuberの割合も増えたとはいえ、やはりLive2Dの主な活用先はゲームになるでしょうか?
Live2DなのかSpineなのかはいろいろな都合がありますが、立ち絵が動くことは当たり前になっていますよね。他にもイベントのカットシーンでもキャラクターが動いたりするで、コンシューマーも含めてやはりゲームは大きな活用領域になっています。
― 他にはどんな活用方法がありますか?
多いわけではないですが、動画の素材として書き出してほしいという案件もあります。台詞に合わせたモーションだけつけて、それを動画編集の素材として使うみたいな使用方法でしょうか。
他よりは手軽ですし、Live2Dだけでもできることが増えたので、アニメ的な表現をしたい時に手描きや3Dと並ぶ動画素材の新しい選択肢になっているのかもしれません。
― アニメ制作という領域にも今後Live2Dは浸透していくのでしょうか?
Live2D社さんが今まさにLive2Dを使った長編アニメ制作に挑んでいるのですが、その進捗を見ても期待できる領域だと思います。
テクノロジーの進化によって撮影がデジタルに変わり、素材として3Dモデルを使い始め、作画がデジタルなことも当たり前になってきました。でもまだアニメはアニメ制作会社にしか作れないと思われている。Live2Dだけでアニメがつくれるようになることで、Live2Dの可能性だけでなく、アニメの可能性も広がるのではないでしょうか。
― 全体的なLive2Dの需要はこれからも増えていくでしょうか?
期待したいですね。VTuberにしてもゲームにしてもまだまだ表現としてできることはありますし、その上でこれからアニメ領域での活用や、まだ見ない新しい使い道も見つかるかもしれません。
モーションへの追求が鍵! Live2D上達のコツ
― Live2Dの技術を習得するのにはどれくらいの時間がかかりましたか?
明確に習得するぞと思って始めたのではなく、案件を受けながらバタバタと覚えていった感覚でした。なので、そんなに時間はかかってないと思います。
― と言うことは、全く知識のない状態からも始めやすいということなのでしょうか?
ゼロからでも大丈夫だと思います。使い方はいろいろなところで学べますし、良いお手本もいくらでも見られるようになりましたからね。
あえていうなら、立体的なモーションをつけるには、その立体的な動きをイメージできないといけないので、イラストレーションで言うところのパース感覚みたいなものは重要になってきますが。ただ、それはLive2Dに触れる中で鍛えられていくと思います。
なので、難しいことはあまり考えずに、とにかく触ってみてほしいですね。
― 技術の上達が現れるのはどの部分になるのでしょう?
一番技術やセンスが現れるのはモーションだと思います。でも可愛いモーションをつけるにはモデリングも細かくないといけないので、結局全部ということになってしまいますね(笑)
Live2Dの醍醐味はなんといっても絵が動くことなので、魅力的な動きの追求はそのまま全体のレベルアップにもつながりますよ。
― では最後に、その魅力的な動きの追求のためにはなにをすれば良いのでしょうか?
動きを魅力的に見せるコツは“ 細かい部分にいかにこだわるか”です。なので、いろいろなアニメ作品をコマ送りで見て、可愛さやかっこよさを構成するポイントを探ってみると良いんじゃないでしょうか。地道ですが、やはりそうした細かい積み重ねが魅力的な表現を産み出す土壌になると思いますね。
(取材・文:オグマフミヤ)
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