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FUN'S PROJECT CHANNEL 2018.12.13

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【吉田健一×中武哲也】イラスト集「edge」再版記念トークイベントレポ(前編)

2018年11月10日(土)に市ヶ谷の東京アニメセンター in DNPプラザにて、「edge」 Creator’s Talk Supported by FUN'S PROJECTの第一弾が開催されました。

「edge」はアニメーションプロデューサーである中武哲也氏の呼びかけで2004年に制作された冊子。発行から14年の時を経て、今回、新たな装丁・描き下ろしの表紙画で「edge」が再版されることになりました。

本イベントでは、「edge」に参加するトップクリエイターの中からアニメーターの吉田健一氏をゲストに迎え、プロデューサーの中武哲也氏との対談が実現。日本のアニメーション界を牽引するお二人のライブトークが聴ける貴重なチャンスとあって、客席は満員となりました。

ほかにもスペシャルな企画満載で開催されたFUN'S PROJECT会員限定イベントの様子を、前編・後編に分けてレポートします!

中武哲也氏が「edge」に込めた想い

今回のスペシャルトークイベントは、「edge」が再版されることを記念したイベントの第一弾。まずはその「edge」の紹介から始まりました。

「edge」はアニメーションプロデューサーの中武哲也氏が、日本のトップクリエイターの絵の魅力を世界中に発信したいという、純粋な絵描きとしての絵を見ていただきたいという想いを込めて2004年に制作したコンセプトアートイラスト集です。

発刊したいきさつについて、中武氏は、

「その頃はProduction I.Gで制作進行をしていたのですが、出会うアニメーターがみんな魅力的な絵を描く、すごく面白い人たちばかりだったんです。この人たちの自己表現としてのイラストを画集にしてみたいという欲望がありました」

また、「edge」というタイトルの由来について、

「当時編集をやってくださっていた本田さんという方からのコンセプトで「edge」という言葉が発されました。日本から海外に商品出荷をしたいという強い想いが僕にもあって。僕は時代劇とか結構好きなんですけど、やっぱ、……カッコイイじゃないですか。“edge(刃・刃の切れ味)”って通りがいいんじゃないかな、と」

そして今回、2018年11月に、発行から14年の時を経て、新たな装丁・描き下ろしの表紙画、かつ色の再現性をさらに高めた「edge」が再版されることになりました。

当時、アニメーターさんたちに描いていただいた絵が今見ても十分魅力的であること。さらに、14年の間にアニメーターの世代も変わってきているため、ここで一度「edge」を再版して、さらにまた次の「edge」を作っていきたい、という想いから、今回の再版に踏み切ったそうです。

再版に際して、中武氏は、「さぁここに日本を代表するクリエイターの絵がありますよ。みなさん、どうぞ見ていってください」という熱い想いを語っていました。

今回のゲストである吉田健一氏は、2004年の「edge」にイラストを寄せたアニメーターの1人です。当時、Production I.Gに所属していた中武氏と、ボンズの吉田氏。ライバル会社のアニメーターへの依頼ということで、オファーには苦慮したというエピソードを明かしてくれました。

そんな「edge」に寄せた吉田健一氏のイラスト『護鬼 ゴールク』は、アニメーターである吉田氏にとって、個人でイラストを描いて商業誌に掲載するという初めての経験だったそうです。

「アニメーターって基本的にオリジナルなものを描かないので、最初は何を描いていいのか分からなかったんです。中武さんから「edge」というタイトルを聞いて、それなら“物騒な”絵を描こうと思いました。当時は『WOLF’S RAIN』というアニメが完成間際で、『交響詩篇エウレカセブン』が始動しかけの頃。エウレカセブンの主要キャラクターに、ホランドとエウレカという人物がいるのですが、実はこのイラストの2人が原型なんです」

吉田氏がキャラクターデザインを務めた代表作ともいえる『交響詩篇エウレカセブン』のエウレカとホランドの原型と、作品化されなかった企画のイメージをミックスしたという貴重なイラスト、『護鬼 ゴールク』。

少年少女の背後に描かれたロボットのようなヒトならざるもの、民俗っぽいモチーフについては、吉田氏が大ファンである諸星大二郎のマンガ『マッドメン』に登場する、パプアニューギニアのお面や文様などから着想を得て、吉田氏なりに表現したものだそうです。

10時間にわたる吉田健一氏のイラスト制作を記録したダイジェスト映像

トークだけでなく、スペシャルな企画も満載だった本イベント。

その1つとして、吉田健一氏による10時間(!)におよぶイラスト制作の様子をまとめた貴重な記録映像が上映されました。

このイラストは今回の企画のために事前に機会を設け、10時間にわたって一気に描き上げたもの。描きはじめから完成までの全てを撮影し、約13分の映像にまとめました。

この日が初公開となるイラストとメイキング映像を上映しながら、お二人にこの10時間を振り返っていただくと、

「何を描くか全然考えていなかったので、その場で考えながら描きました。「edge」の再版記念ということで、女の子とあの怪物の手にしよう、と」(吉田氏)

「吉田さんの人物画は清廉さがあるなぁとずっと思っていました。性的な要素で押すのではなく、女性にも受け入れられやすい貴重な絵柄ですよね。日本のアニメ史の良いところがうまく吉田さんの絵に集約されているのではないかと思ってます」(中武氏)

下絵は10Bの鉛筆を使って薄い黄色の修正用紙に描き、途中からデジタルに移行して彩色・仕上げをしていきます。
参加者の中にはご自身でイラストを描く方も多かったようで、身を乗り出して熱心に画面を見つめる皆さんの姿が印象的でした。

こちらが完成した新作イラスト。

また、この動画はFUN'S PROJECT COLLEGEで近日公開予定です。ご期待ください!

大盛り上がりのスペシャルトークイベントはまだまだ続きます。後編をお楽しみに!

ゲスト紹介

吉田健一
1969年生まれ、スタジオジブリに入社し、『耳をすませば』『紅の豚』『もののけ姫』など、原画として参加。『OVERMANキングゲイナー』『交響詩篇エウレカセブン』『ガンダム Gのレコンギスタ』などいずれも話題作となった作品のキャラクターデザインを務めた。
アニメーターだけでなくイラストレーターとしても活躍し、書籍やCDジャケット等のイラストも務める。吉田健一氏が描く人物画は凛々しく清潔感があり、スタジオジブリが作り上げた視聴者側が感じる絵の受け入れやすさと、安彦良和氏の描く絵の魅力を継承しつつ、時代に即したデザインを世に送り出してきた。
Twitter @gallo44_yoshida

中武哲也
1979年11月16日生まれ、日本のアニメーションプロデューサー。株式会社Production I.Gを経て、2012年株式会社WITSTUDIOを設立、同社の共同創業者・取締役を務める。
TVアニメシリーズ 「進撃の巨人」「甲鉄城のカバネリ」「ギルティクラウン」等を制作。