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連載第5回岩井勇気のコントCDⅡ-梶裕貴×岩井勇気-前編

アニメ声優系ニュースサイト「アニメイトタイムズ」と、アニメ、マンガ、ゲームなど、日本が誇るエンタメコンテンツの魅力を発信し、クリエイターやコンテンツホルダーとファンをつなぐサービス「FUN'S PROJECT」のコラボによる特別対談企画「クリトーク!」。
第5弾では、人気お笑い芸人として活躍しながら、声優を起用したコントCDなどを制作するという同人活動も行っているハライチの岩井勇気さんが登場。さらに、今年の夏のコミケ(コミックマーケット94)で頒布された『岩井勇気のコントCDⅡ』の出演者でもある人気声優の梶裕貴さんとのスペシャル対談が実現しました。

「アニメイトタイムズ」と「FUN'S PROJECT CHANNEL」で同時公開される「クリトーク!」前編では、岩井さんがコントCDを作ることになった経緯や聴きどころ、梶さんがコント収録に挑戦した感想などをうかがいました。
さらに、後編では、お笑い界と声優界の最前線で活躍しているお二人が学生時代や新人時代をメインテーマにトーク。声優やお笑い芸人だけでなく、ゼロから何かを作り出すクリエイターを目指している皆さんにとっても、大きなサポートにもなるような内容となっているはず。
後編と併せてお楽しみください。

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梶裕貴(かじ・ゆうき)
ヴィムス所属。東京都出身。2004年に声優デビュー。2007年に『Over Drive』の篠崎ミコト役で初の主人公を務めた。その他の主な代表作に、『からかい上手の高木さん』(西片)、『進撃の巨人』シリーズ(エレン・イェーガー)、『七つの大罪』シリーズ(メリオダス)などがある。

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岩井勇気(いわい・ゆうき)
ワタナベエンターテインメント所属。埼玉県出身。2005年、幼なじみの澤部佑と「ハライチ」を結成。さまざまなバラエティ番組などで活躍する中、アニメや声優に関する深い造詣を生かして、アニメ関連の番組やイベントでも活躍。毎週火曜21時にTBSラジオ『ハライチ岩井勇気のアニニャン!』、隔週金曜20時からニコ生『ハライチ岩井勇気のアニ番』に出演中。2016年の冬コミ以降、サークル「スプーキーE」として同人活動も行っている。
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お笑いのプロである岩井さんの台本に、声優が参加して一つの作品を残す

─最初に、梶さんも出演されている『岩井勇気のコントCDⅡ』が制作されることになった経緯を教えてください。

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岩井勇気さん(以下、岩井)
当然、『コントCDⅡ』の前に『1』があったわけで、その話からになるのですが。今の人ってテレビをあまり見なくなってるじゃないですか。だから、映像よりも、何かをやりながら耳で聴けるようなものの方が良いんじゃないかなと思って、音声だけのコントのCDを出そうと考えたんです。でも、僕らハライチは漫才しかやらないんですよ。

─漫才とコントでは大きく異なるものなのですか?

岩井
漫才ってフリートークの延長にあるもので、コントは演劇の延長にあると思うんですね。 それで、コントをやるなら、演じることに長けている人の方がいいだろうと。それで、音声だけで演じることに長けている人といえば、やっぱり声優さんだろうと思ったんです。

─それで石田彰さんと関智一さんをキャストに起用した『岩井勇気のコントCD』が作られたわけですね。では、夏のコミケ(コミックマーケット94)で頒布された第2弾『岩井勇気のコントCDⅡ』を作る際、下野紘さんと梶裕貴さんにオファーを出した理由は?

岩井
お二人で一緒にラジオなどをやられていたのは知っていたし、僕はアニメが好きだから、お二人の声はよく聴かせていただいているんですね。自分が書きたいコントに合うような声の人は誰だろうと考えた時、お二人なら書きやすいだろうと思ったんです。それで、やってもらえたら良いなと思ってダメ元でオファーをしてみたら、なぜかOKしてもらえたんです(笑)。
梶裕貴さん(以下、梶)
いやいや、嬉しかったですよ(笑)。岩井さんもおっしゃっていましたが、僕たち声優は声の役者なので“声だけで芝居をするプロフェッショナルである”という誇りを持って、普段からお芝居をさせていただいています。なので、そういう意図があって声をかけてくださったことがまず嬉しいなと思いますし、アニメが好きな岩井さんに、(コントが)書きやすいと思ってもらえたことも嬉しいですね。それに、お話を聞いた時、この企画自体がとても面白そうだなと思いました。お笑いのプロである岩井さんが書いた台本に、僕たち声優が参加して一つの作品を残すというのは、ありそうでなかったことというか。今まで見たことがないものになるんじゃないのかな、というところですごく興味深かったです。

─お二人は、CDを収録する前に面識はあったのですか?

岩井
はい。イベントなどでご一緒して。
そうですね。
岩井
以前、梶さんの出ている作品のイベントのMCをやらせてもらった時、梶さんはすごく喋ってくれるし、ノリも良かったので、MCとしてすごく助かったんですよ。だから、梶さんにお願いできたら、やりやすいだろうなと思っていました。

─梶さんが台本を受け取ったのは、オファーを受けた後だったのですか?

後でしたね。なので、お話を頂いた時は、どういう内容でどういう役どころなのかは分からなかったんです。でも僕としては、極端な話をすれば、当日に現場で台本をもらう形でも良いかなとすら思っていました。
岩井
へ~。そうなんですか?
もちろん、間違えないように読むという意味で、事前に台本をチェックすることも大事な仕事ですけれど、「お笑い」ではノリというものも大事だと思いますし、もし岩井さんが許してくれるのであれば、そういうやり方もありなのかなって。昔、テレビアニメのアフレコで完全なギャグ回があったんですが……普通、アフレコでは、必ず1回はテストをするものなんですけど、その時はテストなしで、いきなり本番だったんです。そんな経験もありつつ、何回も(練習して)追っかけてしまうと、笑いの鮮度を失ってしまうんだろうなって。 実際、このコントCD も、テスト(リハーサル)をしてから録っていくわけではなく、いきなり本番として録っていく形でしたし。
岩井
僕らも練習するのは好きじゃないので。ハライチも全然練習しないんですよ(笑)。(台本を)書いて、2回くらいやったら本番に出るんですよ。
ええ、すごいなあ。
岩井
芸人の中でも練習しない方でしょうね。そういう「生感」は、僕らも大事にしたいなと思ってます。それに、 下野さんと梶さんは、お互いの「間」を分かっていたので、すごくやりやすかったですね。いきなり本番で合わせてもらっても、お互いが相手を待ち合って、お見合い状態になったりしないんですよ。そこもすごいな、息が合ってるなと思いました。
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「この人、何言ってるの?」って笑える感じが、梶さんの声に合っている

─梶さんは、台本を読んだ時、どのような感想を持ちましたか?

読み物としても、すごく面白かったです。プロの芸人さんならではのユーモアが詰まっていて。読んでいて、思わず笑っちゃいましたし、これを実際に自分がやってみたらどうなるのかなって思いました。ただ、それに関しては実際に(スタジオで)やってみないと分からないな、という感覚もありましたね。(取材の時点では)僕は、まだ完成したものを聴けていないのですが、正直……終わった時点では、あまり手応えが無かったんです(笑)。
岩井
あはは(笑)。
「これで大丈夫なのかな?」って。収録の時はお客さんがいるわけではないので、反応が分からないじゃないですか。だから、はたして(台本以上に)面白くなっているのだろうかという気持ちがあって。早くCDを聴きたいです(笑)。

─岩井さんは、下野さんと梶さんの2人をイメージしてコントの台本を書かれたとのことですが。梶さんに対しては、どのようなイメージを持っていたのでしょうか?

岩井
すごくまっすぐな感じで、それがボケになってるみたいなところが描ければ、面白くなるのかなと思いました。真面目なトーンで話していることに対して、「それ違うよ!」と突っ込むのではなく、「この人、何言ってるの?」って笑える感じが、梶さんの声に合っているのかなって。一方で、下野さんはもうちょっと飛んでいるキャラクターで、思い切り突っ込まれる笑いの方が面白そうかなと思いました。

─「デスゲーム」で梶さんが演じている「内海」は、まさにそういうキャラクターですね。真面目にまっすぐ暴走している感じで。

岩井
ああ、「デスゲーム」は、完全にそういうイメージですね。
たしかに、そういう感じでした。僕が今まで演じてきた役に、まっすぐなキャラクターが多いせいかもしれません。ですが、僕のことよく分かってくださっているなと思いました(笑)。「デスゲーム」の内海は、キャラクター自身が大真面目であればあるほど、周りは違和感を感じるというか、そのミスマッチが面白くなるなと思って。勝手に正義のヒーローみたいな気持ちを全開にして、やらせていただきました。
岩井
芸人がやるわけではないので、「ボケてますよ!」という感じでやると、外してしまう可能性もけっこうあるので。やっぱり、演じてもらうことがボケになっている方が笑えますよね。
そうですね。本人が笑わせようとしていない方が面白いのかなと思います。
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─収録前には、コントの内容やキャラクターについて、説明などはされたのでしょうか?

岩井
コントによっては「こういう感じで」とお願いしたものもありますが、本当に大まかな感じです。それでも、思っていた以上の演技をしていただいて、台本以上に面白くしてもらえたと思います。すごく助かりました。
ありがとうございます。

─梶さんは、収録前、どの程度キャラクターやお芝居のイメージを固めていたのでしょうか? アニメなどの現場では、事前にイメージを作りつつ、現場で監督や音響監督らと話しながら固めていくとが多いのかなと思うのですが。

例えば、原作がある作品であれば、基本的には原作を書かれている先生の中に答えがあると思いますし、オリジナル作品であれば、監督が作りたい物が大事になってくると思います。今回の場合は、完全に岩井さんの中にしか正解はないので、自分の中で芝居を作っていくというよりも、まずは現場に行ってやってみて、どう感じていただけるのかな、という感じでした。それに、キャラクターの設定画や説明書きなどは一切無かったので……。
岩井
何もないですね(笑)。「こんな風にやってください」っていうのも、ほとんど言ってないですよね。
そうですね。演出という部分では、ほとんどなかったように思います。いきなり1回録った後、「ここだけ、こういう言い方してもらって良いですか」みたいなことが少しあったくらいですかね。だからこそきっと、この作品の面白さを、ちゃんと現場レベルで共有できていたんじゃないのかなと思います。あと、岩井さんの台本が上手いからだと思うのですが「こうやったら面白いだろうな」ということが、(台本を)読めばすぐに分かったんですよね。悩んだりすることもまったくありませんでした。ただ、今回、コントが3本と、連続物のショートコントが3本だったわけですが……僕がその中で演じた4人は、比較的近いキャラクター性を持っていたので、声優としてはなるべく演じ分けたいという思いもあったんです。でも、それぞれ役割は決まっているので、それを変えるわけにはいかない。先ほど岩井さんがおっしゃった「まっすぐだから面白い」というキャラクターを、まっすぐでなくしてしまうと、面白さが半減してしまうので……。
岩井
そうなんですよね。
なので、「変わってないじゃん」と思われたとしても、とにかく面白いことが最優先!という気持ちでやらせていただきました。ただ、下野さんのホピリータとかは、心の底から羨ましかったですね(笑)。

─「アナグーランド」で下野さんが演じている毛のふさふさした謎の生き物ですね。

岩井
面白さ先行で書いたので、確かに、梶さんの役は同じ系統が多いかもしれませんね。でも、その中でも幅広く演じていただいたので、さすがだなと思いました。
ありがとうございます。あ、でも、「セカンドマリッジ」の先生は、ちょっと飛んでいる役でしたね(笑)。

─梶さんが、下野さんの演じる中学生男子の担任役という関係性も面白かったです。

僕は、このくらいの年齢の役をやることがあまりないですからね。最終的には、下野さんの●●(※ネタバレのため伏せ字)になりますし(笑)。
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下野さんと梶さんの息の合い方がすごい。さすが「しもかじ」

─収録されているコントの中で、梶さんが特にお気に入りのコントや、キャラクターを教えてください。

難しいですね~。好きなキャラと好きなコントは、また違う感じもしますし……。でも「デスゲーム」は、僕としてはやりがいがあったというか、エネルギー的に一番発散できて。「コントをやった感」が一番あった気がします。「セカンドマリッジ」は淡々とボケている感じで、「アナグーランド」は巻き込まれていく感じだし、「ラブレター」は突っ込む側。エネルギッシュにボケられるという意味で「デスゲーム」の内海は、すごく気持ち良かったです。

─では、梶さんの演じた役の中で、岩井さんが特にお気に入りなのは?。

岩井
同じですね。「デスゲーム」の内海です。最初、下野さんのキャラがボケなのかなと思わせておいて、逆に(内海に)振り回される。
そこが面白いですよね。
岩井
自分の正義感に従って行動してめちゃくちゃになっちゃうところが、すごく良かったです。(梶さんは)きっと、私生活でもこんな感じなんだろうなって(笑)。
あはは(笑)。でも本当に、まっすぐやればやるほど面白い役なので。今までにやってきた、まっすぐな巻き込まれ型のラノベ主人公的なお芝居の経験値が生かされるキャラだなと(笑)。そういった作品をご覧いただいている方であればあるほど、より笑ってもらえるのかなとも思います。

─「あの作品では、この台詞、カッコ良く聞こえたのに」みたいな。

そうそう!(笑)。そういうのを含めて笑っていただける気がしますね。

─下野さんと梶さんの演じるコントについて、あらためて、岩井さんの感想を聞かせてください。

岩井
やっぱり声の演技が素晴らしいです。芸人の場合は、声だけでやっているわけではないので、顔とかに頼ったりするんですよ。でも、それはCDには乗らない。聴く側が、その芸人のことを分かっていれば、どんな表情をしているか想像して聴くとは思うんですけれど、それではCDでコントをやってる意味がないので。音だけで作るには、声優であるお二人に頼んで良かったなと思いました。
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─これが前編最後の質問になるのですが、『岩井勇気のコントCDⅡ』のセールスポイントを教えてください。

本作は第2弾ではありますが、このシリーズの魅力は、今までになかった新しい音の表現だったり、笑いの表現だったりするのかなと思います。朗読劇や舞台とかで、(声優以外の)他のメディアの役者さんと共演させていただく機会はありますが、また違うプロフェッショナルの方と一緒に作品を作れるというのは、僕自身、とても良い刺激になりました。きっと聴いてくださる方も、今までにない新しいものを聴けたと感じてくださるに違いありません。本当にありがたくて嬉しい機会だったので、いつかまた、ぜひチャレンジできる機会があれば嬉しいですね。
岩井
先ほども話しましたが、収録の時に「ここをこういう感じで」とお願いするようなことは、ほとんどなかったのですが、少しだけ録り直したところも、本当にざっくりと伝えただけで完璧にやってもらえて。さすがだなと思いました。そうやって、その場で変えてもらったところでも、下野さんがこういう風にやったら、梶さんはこういう風にやるという息の合い方が凄かったですね。あと、コント全体を通して、テンポがめちゃくちゃ良い。心地良いテンポなので、聴いていて気持ち良いです。コントでは「間」が一番大事ですからね。そこもさすが「しもかじ」だなって思いました(笑)。
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【取材・文=丸本大輔 撮影=相澤宏諒】

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梶裕貴(かじ・ゆうき)
ヴィムス所属。東京都出身。2004年に声優デビュー。2007年に『Over Drive』の篠崎ミコト役で初の主人公を務めた。その他の主な代表作に、『からかい上手の高木さん』(西片)、『進撃の巨人』シリーズ(エレン・イェーガー)、『七つの大罪』シリーズ(メリオダス)などがある。

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岩井勇気(いわい・ゆうき)
ワタナベエンターテインメント所属。埼玉県出身。2005年、幼なじみの澤部佑と「ハライチ」を結成。さまざまなバラエティ番組などで活躍する中、アニメや声優に関する深い造詣を生かして、アニメ関連の番組やイベントでも活躍。毎週火曜21時にTBSラジオ『ハライチ岩井勇気のアニニャン!』、隔週金曜20時からニコ生『ハライチ岩井勇気のアニ番』に出演中。2016年の冬コミ以降、サークル「スプーキーE」として同人活動も行っている。