中川翔子のポップカルチャー・ラボ連載第7回-グラフィックデザイナー・イラストレーター にしだあつこ

Photo : Shuya Nakano Styling:Aya Omura Hair and Make:Michiko Kashiwase Text by Takanori Kuroda Edit:Takuro Ueno (Rolling Stone Japan)

FUN'S PROJECT TOP > ポップカルチャー・ラボ > グラフィックデザイナー・イラストレーター にしだあつこ対談

クリエイター共創サービス「FUN'S PROJECT」がお送りする連載企画。中川翔子さんと多彩なゲストによる、クリエイターの「こだわり」にフォーカスしたトークセッションを毎回お届けします。第7回のゲストは『ポケットモンスター』シリーズのキャラクターデザイナーとして、あの「ピカチュウ」のデザインに関わったにしだあつこさんです。

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中川翔子
女優・タレント・歌手・声優・イラストレーター。
東京2020大会マスコット審査員や、2025年万博誘致スペシャルサポーターなど、国家プロジェクトに参加するなど、国内外に向け広く活躍。 音楽活動では7/10に小林幸子&中川翔子「風といっしょに」(7/12公開『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』主題歌)をリリース。リリースイベント「ポケだちツアー」を全国各地で開催中。 アメリカ・アジアでライブ出演するなど、アーティストとしての人気は海外にも広がっている。
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にしだあつこ
『ポケットモンスター』シリーズのキャラクターデザイナーの1人。グラフィッカー、デザイナーとしての経験を経て株式会社ゲームフリークに入社。社員時代に『ポケットモンスター 赤・緑』のデザインに携わる。「ピカチュウ」をはじめ、さまざまなポケモンのデザインを担当。他、ゲーム、カードイラスト、企業キャラクターなど、さまざまなジャンルでもイラストやデザインを手がける。現在はフリーランスで活動しているが、『ポケットモンスター』シリーズには引き続き参加している。

「ドット絵は私の原点」(にしだ)

アニメクリエイター、イラストレーター、ゲームクリエイター、声優など、日本が誇るポップカルチャーの領域で活躍している方々と、中川翔子による一対一のトークセッション。今回のゲストは、『ポケットモンスター』シリーズのキャラクターデザイナーとして、あの「ピカチュウ」のデザインに関わったにしだあつこさん。後編では、にしださんが実際に使用しているツールについての話も。

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中川翔子(以下、中川)
ノートを持って、外へネタ探しに行くこともありますか?
にしだあつこ(以下、にしだ)
ネタ探しで外出することはあまりなくて、大抵は家の中にあるものからひらめくことが多いです。例えばドレディアは、家でユリの花を見ているときに思いついたんですよ。
中川
ドレディアもにしださんだったんですね!

にしださんの描くポケモンは、強くて可愛い子が多いですよね。エルフーンもそうだし、ニンフィアなんて「フェアリースキン」という隠れ特性まで付いたら無双状態ですもんね。
にしだ
コロボーシも私がデザインしました。
中川
コロボーシも不思議なデザインですよね。
にしだ
あのときは、昆虫をモチーフにしたポケモンを作ることになって。今までになかったデザインで、進化したら面白そうなデザインを考えました。コロトック(コロボーシの進化形)も、面白いでしょう?
中川
びっくりしました。鳴き声もインパクトあるし。「誰だ、君は!?」ってなりましたね(笑)。そのほかにしださんがデザインしたものでは、可愛いゾロアから、かっこいいゾロアークへの進化も印象的でした。
にしだ
キツネ系のポケモンは、ロコンとキュウコンをデザインした時から「また作りたいな」って思っていたんですよ。というのも、その頃ちょうど『子ぎつねヘレン』という映画にハマってて(笑)。あの映画は悲しい話じゃないですか、だから元気なキツネっぽいポケモンを描きたいなって思ったのが最初のモチベーションだったんです。
中川
すごい!

本当に普段見たものとか食べたものとかをエネルギーにして、そこから作品を生み出しているんですね。あと、ヒトカゲって20年以上愛されている重要なポケモンですけど、途中から「メガシンカ」という展開が生まれて。リザードンから、メガリザードンXとメガリザードンYにさらにパワーアップするようになったじゃないですか。
にしだ
メガリザードンXは私がデザインしました。どうしてもあれはやりたかったんですよ。
中川
可愛いヒトカゲから、カッコいいメガリザードンXというギャップにはゾクゾクしました。
にしだ
ありがとうございます。
中川
デジタルとアナログの話から逸れちゃいましたけど(笑)、実際にイラストを描くときは何のソフトを使っていますか?
にしだ
Photoshopです。例えばポケモンカードのイラストを描くときなど、アタリだけアナログで描いて、あとはPhotoshopで仕上げていきます。アナログっぽい筆とかPhotoshopの中で作ってますよ。クレヨンや色鉛筆のようなタッチで、アナログっぽさというか、丸っこくて暖かい感じを出せたらいいなと思って作画はしています。
中川
Photoshopは大昔に使ったきりなんですけど、そうやって自分で筆を作ってアナログっぽくも出来るんですね。今、私が世界で最も見てみたいのは、にしださんのノートとPhotoshopの画面です!
にしだ
そんな(笑)

CLIP STUDIOにも、例えば「Gラスペン」とか、アナログっぽいタッチのペンがあるみたいですよね。お友達のイラストレーター、漫画家さんは、CLIP STUDIOやSAIの方が多いかな?私は使い慣れているというのもあって、ずっとPhotoshopですけど。
中川
そうなんですね!

私がポケモンカードのイラストを描いたときにはCLIP STUDIOを使ったんですけど、すっごい難しかった……。にしださんが描くアナログっぽさとかすごく憧れて、シェイミを描いたときにもいろんなポーズのラフをまず先方に送って、その中からOKが出たものを描いたんです。「わあ、私は今、本当にオフィシャルのイラストを描いているんだ!」と思ってドキドキしました。
にしだ
そんなことがあったんですね(笑)
中川
すべてOKが出た時は、崩れ落ちそうになりましたね。だから、デジタルのツールを使ってアナログっぽさを出すというのは、私の中の課題なんです。何かコツってありますか?
にしだ
えー、なんだろう。

最初からあまり細かく塗り込まずに、大きい筆でざっと描くところから始めるとか。大まかな色を、先に乗せちゃうんです。それをだんだん整えていくと、アナログっぽくなるのかなって思っていますね。色を混ぜていく感じ……と言いつつ、かなりアバウトなんですけど(笑)
中川
なるほど!

描いていてテンションの上がる色ってありますか?
にしだ
やっぱり、黒には憧れがありますね。
中川
へえー!

黒は意外でした。もっと明るい色をおっしゃるのかと。
にしだ
黒って使いこなすの難しいんですけど、うまくいくとすごくカッコ良くなると思うんですよ。いつもはグレーっぽい黒が使いやすくて多用しがちなんですけど、いつかパキッとした黒を使ってかっこいい絵を描きたいですね(笑)
中川
人間だったら、誰を描くのが楽しいですか? 女の子とか男の子とか、おじさんとかイケメンとか。
にしだ
やっぱり女の子ですかね。イケメンは眺めているほうが好きです(笑)。女の子って、描くときにいろいろとキラキラさせられるじゃないですか。過剰なくらい盛ることもできますし。ちなみにこれは私の名刺なんですけど、女の子のイラストをモチーフにしてるんです(と言いながら、中川に名刺を渡す)。
中川
うわあ、可愛い~!

いただいていいんですか? ありがとうございます、一生の宝にします! ああ、確かに目の形とか口元とか、髪の毛のボリュームを出すタッチとか、どこかポケモンみがありますよね。というか、にしださんみがある。
にしだ
それはうれしいです。この女の子は、 熊本県長洲町で毎年開催している「おひな祭り」をテーマに描いたキャラクターなんです。
中川
そもそもにしださんは、どんなキッカケでイラストレーターの道に進むことになったんですか?
にしだ
私、子供の頃は「戦隊モノ」が大好きだったんですよ。リカちゃん人形よりも超合金で遊んでいたみたいだし。
中川
これまた意外な答え!

ゴリゴリ男子ですね、私も一緒です。
にしだ
(笑)

当時は『太陽戦隊サンバルカン』や『黄金戦士ゴールドライタン』が好きだったんですけど、その代わりというか、弟はリカちゃん人形で遊んでいました(笑)。彼はクリィミーマミ(『魔法の天使クリィミーマミ』)を追いかけてて、私は戦隊モノっていう完全に男女が逆の現象。
中川
男女関係なく、好きなものを追い求められる環境って素敵ですね。
にしだ
それで広告チラシの裏などに、戦隊モノのイラストを描くようになって。気がついたら「ドット絵」にハマっていましたね。『ドラゴンクエスト』に登場するキャラの「ドット絵」とか素晴らしくて、「あんな絵が描けたらいいな」と思っていました。なのでゲームフリークに入社する前は、ドット絵を描く業務もやっていたんです。
中川
そうだったんですね。ドット絵もそうですけど、ゲーム機の都合で色やタッチの制限があったからこそ、その中で工夫するイラストを描くようになったところはありますか?
にしだ
それは絶対にあったと思います。限られた色や線で、どれだけバリエーション豊かなキャラを生み出せるかが勝負なので、ドット絵はその原点というか。
中川
今はフリーで活動されているんですよね。
にしだ
そうなんです。ポケモン以外のイラストもいろいろ描いてみたいなと思って。最近は、スーパーマーケット『ライフ』のキャラクターデザインを手がけたんですけど、「キャラクターとお店のロゴを、いかに融合させるか?」をテーマに考えるのがとても楽しかったですね。
中川
フリーランスのメリットとデメリットは、どんなところにありますか?
にしだ
メリットは出勤しなくてもいいこと(笑)

起きてそのままパジャマで作業に取りかかれる、テキトーなところは気に入っています。デメリットは、スケジュール管理をしてくれる人がいないので、生活が不規則になりがちになってしまったことですかね。「明日やればいいや」と思ってダラダラしてしまって、締め切りに追い込まれたり……(笑)
中川
わかります!

あと、これはいつもみなさんに訊いていることなんですけど、食べてて一番テンションが上がるのは?
にしだ
私はうどんですね。ジンギスカンも大好きで、うどんよりもテンション上がりますけど(笑)、普段なかなかジンギスカンは食べられないじゃないですか。
中川
何をお尋ねしても意外な答えがガンガン返ってくるから驚きの連続です(笑)。では最後に、今後はどんな展開を考えているか教えてください。
にしだ
福岡eスポーツ協会の特別メンバーに起用していただいたので、そこでのキャラクターデザインを今は考えています。それから瀬戸市と組んで、29体の猫を飾らせてもらっているので機会があったら見てもらえたうれしいです。猫に関連するグッズは、今後もいろいろ作りたいと思っていますね。
中川
にしださんが描く猫、見てみたいです。どんな猫なんだろう。
にしだ
猫は自分の中で、永遠のテーマなんですよ。「にっぽん招き猫100人展」に出展したこともあるし、どうやったら猫の可愛らしさをイラストで表現できるか、自分なりに研究しています。
中川
猫、いいですよねえ。
にしだ
本当に!

気まぐれなところとか、触ると柔らかいところ……もう「包まれたい!」って思いますね。お尻をポンポンって叩くと喜ぶ子が多くて、それがまた可愛くて仕方ないです。いつか飼いたいなあ。
中川
我が家にいますので、いつでも遊びに来てください!(笑)

そしていつかmmts(マミタス)で、にしださんの猫イラストとコラボさせてください。
にしだ
ぜひ!
中川
今日は貴重なお話をありがとうございました!
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中川翔子
女優・タレント・歌手・声優・イラストレーター。
東京2020大会マスコット審査員や、2025年万博誘致スペシャルサポーターなど、国家プロジェクトに参加するなど、国内外に向け広く活躍。 音楽活動では7/10に小林幸子&中川翔子「風といっしょに」(7/12公開『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』主題歌)をリリース。リリースイベント「ポケだちツアー」を全国各地で開催中。 アメリカ・アジアでライブ出演するなど、アーティストとしての人気は海外にも広がっている。
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にしだあつこ
『ポケットモンスター』シリーズのキャラクターデザイナーの1人。グラフィッカー、デザイナーとしての経験を経て株式会社ゲームフリークに入社。社員時代に『ポケットモンスター 赤・緑』のデザインに携わる。「ピカチュウ」をはじめ、さまざまなポケモンのデザインを担当。他、ゲーム、カードイラスト、企業キャラクターなど、さまざまなジャンルでもイラストやデザインを手がける。現在はフリーランスで活動しているが、『ポケットモンスター』シリーズには引き続き参加している。
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