FUN'S PROJECT TOP > ポップカルチャー・ラボ > AC部対談
Photo : Shuya Nakano Styling:Aya Omura Hair and Make:Toh Text by Takanori Kuroda Edit:Takuro Ueno (Rolling Stone Japan)
クリエイター共創サービス「FUN'S PROJECT」がお送りする連載企画。中川翔子さんと多彩なゲストによる、クリエイターの「こだわり」にフォーカスしたトークセッションを毎回お届けします。第4回のゲストは2人組ユニットのAC部さんです
Profile

- 中川翔子
- 女優・タレント・歌手・声優・イラストレーターなど、多方面で活躍。東京2020大会マスコット審査員や、2025年万博誘致スペシャルサポーターとしても活動中。また、近年は女優として積極的に活動を行い、2015年朝の連続テレビ小説『まれ』、2017年TBS系『あなたのことはそれほど』、2018年ミュージカル『戯伝写楽2018』、NHKドラマ『デイジー・ラック』などに出演。音楽活動では、9月23日に渋谷ストリームホールのこけら落としコンサートを開催予定。
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Profile

板倉俊介

安達亨
- AC部
- 1999年頃に多摩美術大学在学中に結成されたクリエイティブチーム。ハイテンションで濃厚なビジュアル表現を持ち味に、映像やイラストレーションなどあらゆる形の創作に挑み、人々の暮らしに驚きと生きる活力を与えていくことを目的としている部活。アニメ『ポプテピピック』の人気コーナー「ボブネミミッミ」や、ORANGE RANGE「SUSHI食べたい feat.ソイソース」のミュージックビデオ、「18歳選挙権」のPR キャンペーン映像など、ジャンルを問わず様々な分野で活躍している。
>>AC部コミュニサイト
前編「AC部として、どうなのか?を常に考える」
アニメクリエイター、イラストレーター、ゲームクリエイター、声優など、日本が誇るポップカルチャーの領域で活躍している方々と、中川翔子による一対一のトークセッション。今回のゲストは、テレビ番組やCMを制作する2人組ユニットのAC部。熱狂的ファンを持つアニメ『ポプテピピック』の中の人気コーナー「ボブネミミッミ」を担当し、ぶっ飛び過ぎたシュールな作風で世間をざわつかせています。高速紙芝居など、前人未到の作品を作り続ける彼らの原動力は、一体どこにあるのでしょうか?
- 中川
- AC部さんのことは御多分に洩れず、「ボブネミミッミ」(アニメ『ポプテピピック』の中の1コーナー)で知りました(笑)。「エイサイハラマスコイおどり」のくだりを最初に観たときは衝撃すぎて、何回巻き戻したんだろう?というくらい繰り返し観てしまいました。自分のライブでも、ファンに「エイサイハラマスコイおどりやろうぜ!」と呼びかけたことがあるんですけど、みんなすぐに反応してくれて一緒に踊ったんです。

©大川ぶくぶ/竹書房・キングレコード ©AC部
- 板倉俊介(以下、板倉)
- その映像は見ました(笑)。
- 中川
- わあ、本人に届いていたとは(笑)。とにかく、久しぶりにリアルタイムで実況しながら「絶対観なきゃ」とツイートせずにはいられない、すごいオーラを発する作品に出会ってしまった感があります。アニメ『ポプテピピック』自体、満を辞し過ぎてのアニメ化だったから、きっと相当気合が入ったものになるんだろうと期待してたんです。もちろん、神風動画さんの作画で動いているのを観たときも感動したんですけど、ここまでぶっ飛んでフリーダムに暴れている「ボブネミミッミ」が、全部持っていった感がありますよね。
- 安達亨(以下、安達)
- ありがとうございます。
- 中川
- そもそも『ポプテピピック』から、どんな経緯で「ボブネミミッミ」が生まれたんですか?

©大川ぶくぶ/竹書房・キングレコード ©AC部
- 安達
- 『ポプテピピック』の1コーナーを僕らが担当することになったとき、そのままやってもうまくいかないことは分かってたんです。『ポプテピピック』というのは、いろんなカルチャーをパロディにしているわけじゃないですか。そこを分かってないでそのままやってもスベるのは間違いない。そう思ったときに、正攻法はハナから諦めて、「僕らのコーナーは、『ポプテピピック』ではありませんよ?」っていうエクスキューズで、「ボブネミミッミ」という名前が出てきたんです(笑)。
- 中川
- 実際、反響ってどんなものだったんですか?
- 安達
- 最初はもう、意見がパックリ分かれていましたね。賛否両論でした。SNSもそうでしたが、まず試写会で披露したところ、会場の空気とかすごかったんですよ(笑)。
- 板倉
- 完全にスルーされたというか、シーンとなっちゃって。
- 中川
- え、そうだったんですか!?
- 板倉
- 試写会自体は温かかったんです。「仕込みの人でも入れてるのかな?」っていうくらい笑いが起きていたのに、「ボブネミミッミ」が始まったら一切笑いがなくなっちゃって(笑)。
- 中川
- うーん……(笑)。きっと、みんなびっくりしちゃったんでしょうね、観たことないものを見せられて。脳の部屋の中に入れていい場所が見つからなかったんじゃないかな。私も、夜走りに行くのにハマっていた頃に見始めたんですけど、「ボブネミミッミ」を観てから外に走りに行ったら、ブランカの強キックが頭から離れなくなってしまって。「何を観てしまったんだろう」と思って引き返してもう一回観ちゃいましたから(笑)。一度この世界に入っちゃうと抜けられないというか。大体、この口の形は何なんですか? のどちんこが2つ付いているみたいになってるときや、扁桃腺がむき出しみたいになっているときもあるじゃないですか(笑)。
- 板倉
- 口の形は、いろいろ試している中で出てきたんです(笑)。僕、扁桃腺がすごく弱くて、すぐ痛めちゃうんですよ。なのでよく鏡を見てチェックするんですけど、扁桃腺って身体の中ですごく弱い部分だと思っていて、それが身体の外に出ている状態にしたら、見ていてすごく不安になってくるんです(笑)。それで、「あ、これはいいかも」って採用したんですよね。
- 中川
- 敢えて不安を掻き立てるものを見せているわけですね。しかも、原作を完全にぶっ壊すんじゃなくて、微妙に残しているところがさらに不気味なんですよ(笑)。
- 安達
- そこは、敢えてやっていますね。微妙なところを突くと不安な感じが出るというか。あの口の部分ってオリジナルもすごく強烈なインパクトがあって、あれを描くことによって割となんでも可愛くなっちゃうんです。それで、どうしようと思っていじっているうちに、あそこまで変形していったんですよね。「のどちんこを2つにしてみよう」「クチビルの上に扁桃腺を描いてみよう」みたいな。
- 中川
- なるほど。「ボブネミミッミ」は絵もそうなんですけど、声も病みつきになります。声も2人でやっていらっしゃるんですよね?
- 安達
- はい。声優としての教育を全く受けていないのですが(笑)。
- 中川
- だからこそ出せる味なんですよね。ちなみにポプ子が板倉さんで、ミミ美が安達さんで合ってますか?
- 板倉
- ほぼそうですね。
- 中川
- 「ほぼ」なんですね(笑)。でも話しているときと、声が全然違う! あの声ってすごく真似したくなるっていうか。発明だと思うんですけど、ちょっとやってもらってもいいですか……?
- 板倉
- 「(ポプ子の声で)流行るかな?」
- 中川
- あははは! すげえ、ポプ子だ!! ありがとうございます。
- 安達
- 以前から自分たちの作品に自分たちで声を当てていたんですけど、板倉の声がすごく良くて、彼の声が入っただけで面白くなるんですよね。なので作画に行き詰まったときは、とりあえず板倉の声を入れてみてました(笑)。

- 中川
- その声は宝物ですね。でも、扁桃腺が弱いなら気をつけてください(笑)。あと……ピピ美ちゃんの「オイ!」っていうツッコミもやってもらっていいですか?
- 安達
- 「(ピピ美の声で)オイ!」
- 中川
- うわああ!(笑) すごい、ありがとうございます。文字に起こしづらいこといろいろやらせちゃってすみません(笑)。でも、本当にお2人ともいい声をお持ちだと思うんですけど、公開アフレコとかやったことありますか?
- 板倉
- アップルストアでやったことありますね。
- 中川
- え、アップルストアで!? なんでなんで!?
- 安達
- アニメのワークショップです。「Adobe After Effects」というアニメーションを作るソフトの本を、AC部で出したことがあってそのプロモーションだったんです。Photoshopを使ってその場で描いて、それをAdobe After Effectsに取り込んで、声もそこにはめてアニメを作るっていう。一連のアニメ制作の作業をやったんですよね。
- 中川
- ちなみに実際の作業は、どんな役割分担でやっているんですか?
- 安達
- 作品ごとに色々変えてます。例えば敵キャラと味方キャラとか、作画のカットごととか。人物と背景っていうのもやりましたね。
- 板倉
- 「ボブネミミッミ」に関しては、週2本ずつ作るので、「今回はこんな感じで」っていうのを話し合ったら、お互いに分けて1人1本ずつ担当しています。
- 中川
- ええ? じゃあ、あのサンバ師匠みたいな画風と、ポプ子とピピ美の画風の違いも1人で出しているってことですか?
- 板倉
- そうなんです。僕ら2人とも色んな画風が描けるので(笑)。
- 中川
- 驚くことだらけ……。じゃあ「エイサイハラマスコイおどり」を描いたのはどちらですか?
- 板倉
- あれは僕です(笑)。原作の踊りをそのままやったらずっと可愛くなっちゃうなと思って。どうしようと思って2時間ぐらいベッドに潜り込んで悩んでたんですけど(笑)、ふと高校のときの友だちを思い出したんですよ。僕の前で、急にあの動きを披露してきた友だちが昔いて(笑)。『ストリートファイターII』の絵って、大抵は横から見ているものじゃないですか。その動きを正面から見たのはそのときが初めてで(笑)。その隙だらけの間抜けなアングルは面白いなと思って取り入れてみました。
- 中川
- 高校生の頃の、自分たちにしか分からないような独特のノリってありますよね。それを思い出して、みんなが共有できる笑いに落とし込むってすごいことです。あれがヌルヌル動くヴァージョンも気持ち悪くて最高でした。
- 安達
- あれは僕が作りました(笑)。自分で実際に動いてみて、それを動画で撮ってアニメにトレースする「ロトスコープ」という手法を使っています。
- 中川
- そんな大変な技術を用いているとは!(笑) 何回見ても面白くてすり減らない感じって、どうやって出しているんですか?
- 板倉
- そこは確かに意識はしていますね。作りながら何度もプレビューして、繰り返して観ているんですよ。それで、うまくいってるときは自分でもハマるんですよね。何度観ても飽きないというか、目が離せなくなるんですよ(笑)。
- 安達
- 動画を延々とループさせて、それを観ながら「いい動きだ」って(笑)。
- 中川
- (笑)。作る側がちゃんと「面白い!」と思ってから出しているんですね。
- 板倉
- その判断基準を、僕らは「AC部」のフィルターを通して外に出しているというか。「AC部」にクライアントが求めている作品を、僕らが代理でプレゼンするみたいな。
- 安達
- 「AC部がこう言ってるから、次はこうしよう」とか、そういう感じで話し合っているんです。だから、そこに作家性のようなエゴはないんですよね。常に「AC部として、どうなのか?」っていうことを作品作りのときは考えている。なので意見の衝突もないし、もしあったとしても常に「AC部としてどうか?」に立ち返ることで、打開してきましたね。
- 中川
- そうか。だから分担を自由に刻むことが出来るんですね。お二人がどうアプローチしても、ちゃんと「AC部の作品」になるというか。
- 板倉
- そうですそうです。「自分が描いていて気持ちいい」とか、そういうところじゃないんです。それが結構罠で、いざ出してみると普通になっちゃったりする。そこは惑わされないよう気をつけています。

©大川ぶくぶ/竹書房・キングレコード ©AC部
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- 中川翔子
- 女優・タレント・歌手・声優・イラストレーターなど、多方面で活躍。東京2020大会マスコット審査員や、2025年万博誘致スペシャルサポーターとしても活動中。また、近年は女優として積極的に活動を行い、2015年朝の連続テレビ小説『まれ』、2017年TBS系『あなたのことはそれほど』、2018年ミュージカル『戯伝写楽2018』、NHKドラマ『デイジー・ラック』などに出演。音楽活動では、9月23日に渋谷ストリームホールのこけら落としコンサートを開催予定。
>>しょこたんねっと
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板倉俊介

安達亨
- AC部
- 1999年頃に多摩美術大学在学中に結成されたクリエイティブチーム。ハイテンションで濃厚なビジュアル表現を持ち味に、映像やイラストレーションなどあらゆる形の創作に挑み、人々の暮らしに驚きと生きる活力を与えていくことを目的としている部活。アニメ『ポプテピピック』の人気コーナー「ボブネミミッミ」や、ORANGE RANGE「SUSHI食べたい feat.ソイソース」のミュージックビデオ、「18歳選挙権」のPR キャンペーン映像など、ジャンルを問わず様々な分野で活躍している。
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