FUN'S PROJECT TOP > ポップカルチャー・ラボ > 谷口亮対談
Photo : Shuya Nakano Styling:Aya Omura Hair and Make:Toh Text by Takanori Kuroda Edit:Takuro Ueno (Rolling Stone Japan)
クリエイター共創サービス「FUN'S PROJECT」がお送りする連載企画。中川翔子さんと多彩なゲストによる、クリエイターの「こだわり」にフォーカスしたトークセッションを毎回お届けします。第2回のゲストはキャラクターデザイナーの谷口亮さんです
Profile
- 中川翔子
- 女優・タレント・歌手・声優・イラストレーターなど、多方面で活躍するマルチタレント。現在、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のマスコットを決める「東京2020大会マスコット審査会」審査員としても活動中。また、近年は女優として積極的に活動を行い、2015年には朝の連続テレビ小説「まれ」に出演。2017年にはTBS系ドラマ「あなたのことはそれほど」で、横山皆美役を演じた。今年1月にはミュージカル「戯伝写楽2018」にヒロイン・おせい役として出演し、4月からはNHKドラマ「デイジー・ラック」にカバン職人・讃岐ミチル役として出演している。
http://www.shokotan.jp/
Profile
- 谷口亮
- キャラクターデザイナー。1974年生まれ。カリフォルニア州Cabrillo CollageをArt Majorで卒業。99年、オリジナルキャラクターの制作を開始。福岡市天神の路上でキャラクターグッズを販売しながら今に至る。キャラクターデザインを主にイラストレーターとして活動中。2018年2月28日、谷口がデザインした「ア案」作品が小学生の投票により、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の公式マスコットキャラクターに選出される。
Ryo’s World
前編「見たままを描くのは、すごく勉強になる」
アニメクリエイター、イラストレーター、ゲームクリエイター、声優など、日本が誇るポップカルチャーの領域で活躍している方々と、中川翔子による一対一のトークセッション。今回のゲストは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の公式マスコットキャラクターに選出された、あの「ア案」をデザインしたキャラクターデザイナーの谷口亮さん。中川自身も審査員を務め、早くから彼の描いたマスコットを気に入っていたという。日本の伝統をモチーフとしつつ、近未来的デザインに落とし込むそのセンスは、どのようにして培われたのだろうか。
- 谷口
- 今日でお会いするの3回目くらいですね。
- 中川
- 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のマスコットの投票結果発表の時と、その後の打ち合わせ、そして今日ですよね。発表会当日は、本当に直前まで誰も結果を知らず、見事な秘密保持でしたね(笑)。エンブレムの時は若干先に漏れちゃったりしたんですよ。今の時代、どんなに気をつけていても何処かからリークされかねないのに、本当にトップシークレットで情報の取扱いに気を付けていました。
- 谷口
- (笑)。あの日は会場に着くなり控え室に通されて。「絶対に外に出ないでください」と言われていました。最終選考に残った3人の候補者とは、その控え室で初めて顔を合わせました。
- 中川
- じゃあ、発表の瞬間までご本人すら知らない状態だったんですね。実を言うと、今回のマスコットが公募になると決定して候補作を見た時、もう一発で谷口さんの「ア案」が気に入ったんです。花丸つけて激推し。最終選考を通ってすごくうれしかったです。
- 谷口
- え、そうだったんですか! うれしい(笑)。
- 中川
- もう一目惚れでした。東京らしく日本らしく、日本人にしか引けない線でありつつ、今と未来も表しているスタイリッシュなデザインでもあって。「こんな素敵な絵を描くのは、一体どんな人なんだろう?」って思ってたんです。お会いしたらもう、この滲み出る優しさ(笑)。しかも褞袍(どてら)姿だったし。
- 谷口
- あははは。今日はアロハにしてみました。
- 中川
- お似合いです! そんな見た目のインパクトがありながら、第一声が、「この喜びを大好きな奥さんに伝えたいです」だったじゃないですか。
- 谷口
- あの時は、直前で結果を知って、そのまますぐステージの袖に移され待機してたんです。一応、「選ばれた人はスピーチをお願いします」と事前に言われてはいたんですけど、そんなこと事前に考える余裕なんて、3人ともなかったと思うんですよね。だって、まだ選ばれてないんだから(笑)。
- 中川
- (笑)。でも本当に、最高の人が作り出したマスコットが選ばれて、しかも子供たちが審査に参加するという、最高の形で決まって本当によかったですね。子供たちの会議の様子も覗いてみたかったなぁ。どんな理由でみんな、「ア案」を選んだんだろう。そして、きっと一生の思い出になりますよね。「僕ら、オリンピック・パラリンピックのマスコット選びに参加したんだぞ」って。
- 谷口
- それは僕もうれしいですし、光栄です。
- 中川
- 「今、この時代に生きているんだ!」という実感も湧きますよね。そもそもあのマスコットは、どんな風に思いついたんですか?
- 谷口
- キッカケは、しょこたんの告知動画をFacebookで見かけたからです(笑)。
- 中川
- え!本当ですか?
- 谷口
- だから、こうやってお会いすることになるなんて、何だか不思議な気分ですね。今までもマスコット〜キャラクターのデザイン公募があれば、チョイチョイ応募してたんですけど、全然通ったことがなくて。ああいうのって、審査員は大抵お年寄りじゃないですか(笑)。そうすると、後で選ばれた作品を見ると、どれも似たような当たり障りのないデザインばかりなんですよね。
- 中川
- ああ、分かる気がします(笑)
- 谷口
- でも今回はオリンピック・パラリンピックという国を挙げてのイベントだし、しょこたんを始めいろんな業界の第一人者の方が審査してくれるし、今までよりは僕のコンセプトを汲んでもらえるかなという思いがありましたね。しかも、しょこたんがそうやって僕の「ア案」を推してくれてたと聞いて、強い味方がいて本当に良かったなと思います。
- 中川
- 日本ってキャラクター王国だし、本当に素晴らしいデザインのキャラクターが全国にたくさんあるじゃないですか。しかもインターネットが発達した今の世の中、プロとアマの境界線も曖昧になってきて、素人の方でもレベルが異常に高かったりするんですよね。そんな中、どのデザインにも似ていないオリジナルなキャラクターを生み出すのって本当に大変だと思うんです。もしかしたら今回、エンブレムのデザイン以上に難しかったかもしれない。実際に、例えばポケモンっぽいデザインとか、犬や猫など動物をモチーフにしたデザインが結構多かったんですよ。そんな中、この「ア案」はやっぱり目立っていて。どうやって描き出したんですか?
- 谷口
- まず、エンブレムの市松模様を使うということはすぐに思いついて。
- 中川
- そういえば、エンブレムをモチーフにしたマスコットは他にいなかったかもしれない。
- 谷口
- エンブレムをどうやって使おうかなと思った時に、「市松模様だしやっぱり和風かな?」と。最初は兜をかぶせたんです。そうすると、兜の「吹返」の部分と「つの飾り」を市松模様に出来るなと。それで顔を描き始めたらいい感じになってきて。「これは面白そうなマスコットが描けそうだな」と思いました。
それと、最初の段階では頭の部分にチョンマゲみたいな生花をあしらうつもりだったんですけど、思い切って取り去って。なるべくシンプルに見せようと思いました。あと、しょこたんの言うように、「近未来の、謎の生き物」っぽさは意識しましたね。何か動物とかモチーフにすると、似たようなデザインになってしまうと思ったので。
- 中川
- それがオリンピックのマスコットですね。パラリンピックの方は、どうやって作っていきました?
- 谷口
- オリンピックが市松模様だったので「文化」がテーマ、パラリンピックはそれに対して「自然」をテーマにしようと。それで、海外の人も良く知っている桜をモチーフにしたらどうだろう?と考えているうちに、顔のデザインが決まっていきました。
- 中川
- そうだったんですね。でも本当に、世界中の人たちが「日本人の考える、オリンピック・パラリンピックのマスコットは一体どんなデザインになるんだろう」って、ものすごく期待して待っていたと思うんですよ。間違いなく歴史の教科書にも載るだろうし、それがこんな素敵なキャラクターで本当に良かったなあって思います。
- 谷口
- ありがとうございます。
- 中川
- 谷口さんは、元々どんな道のりを経てキャラクターデザイナーになったのですか?
- 谷口
- 実は親父はイラストレーターなんです。僕とはタッチが全然違う、もっとリアルなイラストを描いているんですけど、小さい頃から親父にはずっと褒めてもらってたんですね。何を描いても褒めてはくれるんですけど、でも描き方は教えてくれない。「お前が好きなように描け」とよく言われてました。
- 中川
- 褒めて伸ばすって大事なことですよね。私は二次創作というか、すでに存在するキャラをもとに絵を描いているので、谷口さんみたいにゼロからイチを生み出す人が一番すごいと思うんです。
- 谷口
- でも、僕も最初は『少年ジャンプ』に載っていた「ウイングマン」や、ビックリマンのキャラなどの模写から入りましたよ。
- 中川
- 「模写は大事」って漫画家の先生たちもよくおっしゃってますね。
- 谷口
- 見たままを描くのは、すごく勉強になりますよね。それが自分の基礎力を上げたと思います。で、そのうち「オリジナルキャラを描きたい」と思うようになってきて、『コロコロコミック』や『コミックボンボン』にあったコンテストに、しょっちゅう応募していたんです。「オリジナルSDガンダムコンテスト」とか。ちなみに「ガムラツイスト」のコンテストでは当選して、シールになったこともありました。
- 中川
- すごい!
- 谷口
- とにかく、「ウイングマン」のデザインが大好きでしたね。黒と青のシンプルな配色……その頃から「シンプルなもの」に惹かれるようになっていたのかもしれないです。
Profile
- 中川翔子
- 女優・タレント・歌手・声優・イラストレーターなど、多方面で活躍するマルチタレント。現在、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のマスコットを決める「東京2020大会マスコット審査会」審査員としても活動中。また、近年は女優として積極的に活動を行い、2015 年には朝の連続テレビ小説「まれ」に出演。2017年にはTBS系ドラマ「あなたのことはそれほど」で、横山皆美役を演じた。今年1月にはミュージカル「戯伝写楽2018」にヒロイン・おせい役として出演し、4月からはNHKドラマ「デイジー・ラック」にカバン職人・讃岐ミチル役として出演している。
http://www.shokotan.jp/
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- 谷口亮
- キャラクターデザイナー。1974年生まれ。カリフォルニア州Cabrillo CollageをArt Majorで卒業。99年、オリジナルキャラクターの制作を開始。福岡市天神の路上でキャラクターグッズを販売しながら今に至る。キャラクターデザインを主にイラストレーターとして活動中。2018年2月28日、谷口がデザインした「ア案」作品が小学生の投票により、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の公式マスコットキャラクターに選出される。
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