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FUN'S PROJECT CHANNEL 2019.1.25

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プロとしてのイラストレーターに必要なものとは?【谷口亮さんインタビュー】

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の公式マスコットに選出された「ア案」をデザインしたイラストレーターの谷口亮さん。

中川翔子さんと対談記事はこちら

今回は、谷口さんにイラストレーターとして必要なことを、東京2020マスコット制作秘話などを交えたっぷり語っていただきました!イラストレーター志望の方には見逃せないインタビューです!

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谷口 亮
フリーイラストレーター。福岡市出身福岡市在住。アメリカ合衆国カリフォルニア州のカブリオカレッジを卒業後、地元福岡にて路上で自作のキャラクターグッズを販売し人気に。2018年2月にデザインした作品が小学生の投票により東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の公式マスコットに選出された。

イラストの仕事を目指し、アメリカの美大で学んだこと。

─谷口さんは、アメリカの美術大学で学ばれていたのですよね?

谷口さん
そうですね。カブリオカレッジでは、絵の基礎的なこと、デッサンを学びました。どっぷり毎日、授業でも授業外でも今以上に絵を描いていたので、環境はすごくよかったと思います。でも、絵を学ぶこと以上に、恩師に出会えたり、さまざまな文化の人と交流でき、ひとつの物を見るのでもいろいろな視点があるのだなと実感できたことが自分にとっては収穫でした。
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─今の谷口さんの絵のスタイルは、いつ頃からできたものなのですか?

谷口さん
子供の頃は、ゲームのキャラクターが好きで、ゲーム会社で絵を描きたいと思っていたんですよ。その影響もありますね。実際には大学卒業してから、イラストレーターである父親に「キャラクター一本で行け」と言われ、プロが言うのだから間違いないかと思い、今のスタイルとなっていきました。

東京2020マスコット誕生と、アイディアの繋げ方。

─東京2020マスコットの公募に関して、応募のきっかけがあったのでしょうか?

谷口さん
特別オリンピック・パラリンピックだから、という気持ちはなかったです。普段からタネをまいて、チャンスがあればなんでも掴んでいかないと、と思い、普段から(さまざまな)公募には積極的に応募していましたね。東京2020マスコットの公募は、たまたまSNSをみて応募しました。

─なるほど。東京2020オリンピックマスコットの「ミライトワ」はどうやって誕生したのでしょうか?

谷口さん
応募概要をみた時に、オリンピックエンブレムをモチーフに使った方が、一体感がでると思いました。和装のもので、市松模様を表現できるものが何かないかなと考え、カブトと角飾りの位置関係がしっくりきたので、2、3分でさっとラフ画を描きました。

─アウトプットまでがすごく早いですね!

谷口さん
アウトプットするときは、頭の中で考えてから、面白そうだなと思ったものだけ、1点か2点描きます。

─最初は、聖火の「ちょんまげ」もつけようとされていたとお伺いしましたが、なぜ外されたのですか?

谷口さん
せっかく市松模様を活用できたのに、あまり目立たなくなってしまうなと思い、外しました。かわりに、体にも市松模様をつけたのと、スポーツイベントなので、ウィングをつけてスピード感も表しました。

─確かにスピード感がありますね。私が初めて「ミライトワ」を見た時は、近未来的なイメージがありました。

谷口さん
リオ2016オリンピック閉会式の時に、東京が近代都市やテクノロジーみたいなイメージがあったので、これが求められるのではと思い、「ミライトワ」は、市松模様が伝統と文化を表しているので、近未来なテクノロジーとのギャップを融合させています。なので、動物モチーフよりも、新しい生命体にしています。「ミライトワ」が伝統・文化を表しているのに対し、「ソメイティ」は、日本にある近代的なものに反するものは何だろうと考え、自然を採用しました。世界の人が日本の自然で一番わかりやすいものは、桜だろうと。
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─桜は世界の方も知る日本の自然ですね。

谷口さん
パラリンピアンのある幅跳び選手を科学的に検証するテレビ番組からもヒントを得ています。ものすごい距離を跳ぶので義足がすごいのではないかと、他の選手も同じ義足で幅跳びにチャレンジしましたが、その選手以上に跳べる人はいませんでした。そこから超人というイメージが思い浮かびました。「ミライトワ」がやんちゃなイメージだったので、逆に「ソメイティ」は大人っぽくてクールで力を秘めている雰囲気です。

─東京2020マスコットはさまざまな要素を組み合わせたものなんですね。東京2020マスコットに選ばれて、谷口さんご自身がよかったことはありましたか?

谷口さん
よかったことは、仕事が増えたことですね(笑)。それと、はじめてお仕事する方たちが優しいということでしょうか(笑)。
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自分の思いを込めた、オリジナルキャラクターを育てていきたい。

─谷口さんが、これからやっていきたいことはありますか?

谷口さん
今は、企業のキャラクターなどを依頼されて制作することが多く、楽しんで作らせていただいています。元々はじめたのが、オリジナルキャラクターをつくってグッズを販売することだったので、自分のオリジナルキャラクターを育てていきたいですね。ネタはたくさんあるんですよ(笑)。これは「ヌヌコ日和」の「ヌヌコ」と言って、11年目のキャラクターにです。元々は『まちがいさがし』の雑誌に1コマ漫画として起用されました。

─かわいい! 癒し系ですね。谷口さんが、今日持っていらっしゃるスマホカバーも「ヌヌコ」ですね。

谷口さん
そうなんです。スマホカバーの他に、TシャツやLINEスタンプもあります。クラウドファンディングで作ったソフビは、世界進出しました。今年の冬には、クレーンゲーム機に登場する予定なので、みなさんよろしくお願いします(笑)。
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谷口氏が考えるプロのイラストレーターに必要なこと、とは?

─谷口さんは、以前、FUN'S PROJECT CHANNELの中で、中川翔子さんと対談されていますね。FUN'S PROJECTは、アニメやマンガのクリエイターやコンテンツホルダーとファンをつなぐサービスなのですが、率直にどう思われていますか?

谷口さん
今風だなって思います。昔だったらアナログで対面で教えるところを、インターネットを通じて学べるのはいいですね。実際に、私が専門学校の講師をしていたころ、熱心な生徒はよく動画の「描いてみた」を見ていましたし、デジタル技術がある方は、そういうコンテンツでよく勉強しているな、という印象です。ただ、うわべだけのデジタルの使い方だけでなく、気づきを伝えられるようなところを考えていかなければ、と思います。

─FUN'S PROJECT COLLEGE でも是非講義をもってください!

谷口さん
もう教えることから離れて2年ぐらい経つので、なにがいいでしょうね? キャラクターのメイキングとかは、いかがですか? キャラクターだったら、下描きは手描きをして、ペンタブは使わずマウスだけで描きます。

─マウスだけで描かれるんですか!?

マウスの方が早いんですよね、ベタ塗りのシンプルなキャラクターが多いので。制作ソフトはIllustratorがメインです。

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─イラストレーターになりたい時に、学んだ方がいいことってありますか?

谷口さん
イラストレーターは、画力が求められる仕事なので、基礎やデッサンは絶対に必要だと思います。デッサンをしっかりすると、バランス感覚が身につき、生きたポーズが描けるようになります。フィギュアを作っていても「足がこんなに小さいのによく立ちますね。」と言われるんですが、バランスがよければちゃんと立つんですよね。

─確かに、このヌヌコの足は小さいのに立っていますね。

谷口さん
そうなんですよ。イラストレーターになるには、ハード(デッサン・基礎)とソフト(アイディア・企画)の両方のレベルを上げていくことが大事。自分が表現したいものがある時、最低限そこまで自分のハードのスペックをあげなければ。

─ぜひ、もっとたくさんFUN'S PROJECT COLLEGEの講義でお聞きしたいです(笑)!では、最後にイラストレーターを目指す方へメッセージをお願いします。

谷口さん
イラストレーターになる近道はないので、コツコツ継続することが大切だと思います。人生にはいろいろな転機があり、そこでイラストを描くのを辞めてしまう人もいますが、自分は転機がなかったので、運良く辞めませんでした。絵本作家のやなせたかし先生が、「すごい満員電車でもずっと降りずにいれば、ある時、席は空くんです。僕なんて終点近くでやっと座った。」とおっしゃっているのですが、まさにその通りだなと思います。

谷口さんのインタビューいかがでしたでしょうか? 今後、谷口さんとFUN'S PROJECTのコラボレーションもあるかも!? お楽しみに!

ヌヌコ日和