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業界20年の現役アニメーション演出家が作画机の裏からコッソリ教える
「将来やってみたいことがたくさんありすぎて絞れない人に」
第5回クリトークをおススメする理由
■「君は将来、何がしたい?」と質問された時に明確に答えられますか?
アニメ、ゲーム、漫画のみならず歌、演劇、お笑いなど広くエンターテイメントの世界で活躍してみたいと夢見る人は今も昔も変わることなく大勢います。
そして、その多くの人はあれもしたい、これもしたい、と夢がいっぱいありすぎて、ひとつに集中できないという経験を持つのではないでしょうか。
例えば、あなたがプロデューサーやディレクターなど各業界で活躍していて自分のチャンスを広げてくれそうな人と出会います。
そして彼らから「君は将来何がしたい、何になりたい?」と質問された時に、あなたはしっかりと明確に答えられるでしょうか。
『雑誌か何かで絵を描いてみたい』
『小説や音楽CDとかの表紙デザインがもしできたなら』
『まだ書けないけど、雑誌でエッセイの記事なんか書けたら』
『恥ずかしいけどテレビCMにもちょい出演してみたい』
『好きなタレントさんといっちょ噛みで、なんかコラボできるなら』
具体的だけどもアバウトな夢がいくつも出てくることでしょう。
しかし、ここで注意しなければならないことがあるのです。
本人の中であれもこれもと夢が湧き上がってきたとしても、それを聞いた方は
『結局、この人は何がしたいんだろう?』
という印象をかえって強く募らせてしまいがちなのです。
そのためか、多くのビジネス本や就職セミナーなどでは、
「将来の進路や目標はひとつに絞りわかりやすくまとめた方がよい」とされています。
しかし、それは一方では正しく、その一方で筆者は「自分を制限する必要は全くない」とあえて言いたいのです。
■『実績』を作ると人は話を聞いてくれるようになる
具体的な例を出しますと、筆者もアニメ業界デビュー前の20代前半頃、やはり同じようにあるアニメ監督とプロデューサー2人に質問されたことがありました。
『将来、何がしたいの?』
アニメ監督とアニメのプロデューサーに質問されたにも関わらず、なんとアニメ監督になりたいとか、アニメ作品作りたいという言葉は自分の中からは一言も出てきていませんでした。
かわりに口から出てきた『やりたいこと』は次の通りでした。
『自分で考えたオリジナルキャラクターで漫画が作れるようになれたら』
『実写映画が撮れたらいいなあ』
『もし可能性あるなら、TVCMのプラン作りなんかにちょい参加もできたら』
『あ、ラジオドラマとかやれたらいいかも』
知らない人が聞いたら、この先どこで何をどうすべきかアドバイスしづらいことでしょう。
つまり筆者の中で漠然とした憧れや願望はあっても、ハッキリとした「これがやりたい!」という自分の進路や道が見えていなかったのです。
それ故に、当時シナリオや映像制作の勉強はしていても、もうひとつ専門技術を習得するのに集中力が出ていませんでした。
その時、お2人は口を揃えてこう言いました。
「なんでもいい、まずはひとつこれっていう『実績』を作れ。
実績を作ると人は君の話を聞いてくれるようになる」
そういいながらそのアニメ監督は自分の名前が正式にクレジットされた販売用の完成作品のビデオテープ(まだLDやDVDがない時代でした!)を取り出し、筆者に見せながら、
「私がこれを作りましたって、見せるんだ。そうするとその相手は興味持ち始めてその先をいろいろと質問してくる。そうなれば、自分のやりたいことができるようになるから」
実際にその監督とプロデューサーはアニメ以外に実写映画撮ってたり、雑誌に連載記事書いてたりと他業種の方との交流を手広くやっていたのですごく説得力がありました。
その例にならい、後年筆者はその監督に弟子入りする形でアニメーション演出家になるための本格的な修行を開始しました。まずはその一本に集中することにしたのです。
その後、自分が演出した作品がDVDとして発売されるとすぐに購入して、事あるごとに持ち歩きました。
そして、他業種の方と会い「どんな仕事されてるんですか?」と聞かれるたびに、
黙ってカバンからDVDを取り出し、「これを作りました」と見せたのです。
すると次の瞬間、相手の表情や反応が大きく変わるのです。
そんな経験を何度もしました。
師匠となったアニメ監督が当時言ったことはまさに本当で、ひとつ身を立てて実績を作ることができると他ジャンル他分野であっても、チャンスはやってくるのです。
もし、あなたがやりたいことがたくさんあってひとつに絞れなかったり、
何かがやりたいけどハッキリと決められないならば、
まずはなにかひとつ、人に胸を張れるものを身につけてください。
それが周りから見たときに信頼や信用になり、そしてあなたへの期待感に変わるのです。
やりたいことがいっぱいありすぎて絞れない、
逆に将来何をしたいかわからない、
クリトーク第5回の対談は、そんな悩みを持つあなたにピッタリの内容です。
お笑いと声優。
一見、何のつながりも関係も無いように感じるかもしれません。
しかし、たとえジャンルが異なってもちゃんと見てくれている人が必ずいるのです。
実績は、見ている人の心を動かす力があります。
その実績がまた違った形の実績を呼び、いつの間にかジャンルの垣根を超えてドンドン広がっていくのです。
ぜひ一読して、ひとつの道から幾つもの可能性を広げていったクリエイターの姿を参考にしてみてくださいね。
最後に、クリトーク第5回の中でとても印象に残る対談内容(声優・梶裕貴さんの話)がありますのでご紹介します。
(中略は筆者による)
《クリトーク第5回より抜粋》
「中学2年生の時に『声優という職業は、何をやっても頑張った分だけ自分に返ってくるんだよ』という言葉を知ったんです。それまでは、本当にいろいろな夢があって。
(中略)
でも、その言葉を知った時に『声優なら、ひとつひとつ夢を切り替えなくても、全部のことを極めてしまえば、それがベストに繋がるんだな』と思えたんです。それからは夢が変わらなくなりましたね。
(中略)
すぐに結果が出るとは限らないですけれど、皆さんもチャレンジする気持ちを大事にして欲しいですね」
下田久人/アニメーション演出家
アニメーションの制作進行を経て、2001年「週刊ストーリーランド(日本テレビ)」でアニメーション演出家としてデビュー。その後テレビやゲームを中心にアニメーション映像の監督、演出を行う。これまでのキャリアの中で約40タイトル、100本を超える制作本数を手掛けている。
また劇作家・小池一夫漫画塾の漫画原作者養成コースに入塾。キャラクター原論と漫画作成術を学ぶ。特にキャラクターを魅力的に感じさせる「キャラを起てる」技法の徹底指導を受ける。
2017年12月にAmazonプリントオンデマンドより絵本テイストの作品「トタン屋根のブリキネコ ギィー」を出版。(kindle版も同時発売)
知的財産管理技能検定3級取得(国家試験)
DPA認定ドローン操縦士