FUN'S PROJECT INTERVIEW


FUN'S PROJECT INTERVIEWではクリエイターの方々に独自インタビューを行い、未来のクリエイターの指針になるべく創作の原点や作品への思いを熱く語っていただきます。

#010 声優 西山宏太朗さん2020.10.20

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漫画で描かれる喜怒哀楽を声で表現したい

オーディオドラマ『零の欠片-ゼロフラグメント-』(以下、ゼロフラ)で美津宮零児(みつみやレイジ)役を演じる、声優・西山宏太朗さんの単独インタビューをお届けします。 キャラクターづくりから、クリエイティブな活動まで。今、西山さんが考えていることを、思う存分話してもらいました。


Photo : Shuya Nakano Styling:Aya Omura Hair and Make:Toh Text by Saori Sekiya Edit:Masayuki Shoji (honcierge)

この後『ゼロフラ』の作品収録を控えていらっしゃるということですが、まず、台本を見た印象はいかがでしたか?


セリフ一つひとつにキャラクターの個性がすごく詰め込まれていると思いました。非現実的な世界観にもかかわらず、理解しやすくて入り込みやすい雰囲気がある。きっと、これは作品が持っているパワーの強さなんだろうなと。その魅力を皆さんにお伝えできたらいいなと思いながら、楽しく読ませていただきました。

特に入り込みやすかった部分は?


キャラクターですかね。例えばサブロウ(磐井三郎)も、違う作品だとあんなに明るいキャラじゃないだろうなと。でも、あえて明るく元気に描いているところが、壁を感じさせず、入り込みやすくしているところだと思います。イツキ(宗像樹)やサブロウの持つフランクさやエネルギーが作品全体のテンションを上げているなと感じましたね。読んでいても面白かったです。

今回西山さんが演じる、レイジの印象は?


台本だけを読んだときは、かなりクール寄りなキャラだと思っていましたが、コミックスの表情を見るとクールなだけじゃないなと。喜怒哀楽がしっかりあって、すごく深い愛がある人。台本の中にも感じる部分はありますが、イラストを見たときに、確かにこういう表情をするなと納得し、収録をする上でもすごく大きなヒントになりました。

まだまだレイジは、謎が多いキャラですよね。演じるにあたり気になることが多いのでは?


そうなんです。今のところだけだと「あれ、これって伏線になるんだろうな」と期待させられる部分がすごく多くて。正直続きがとても気になっていて、早く演じたいです(笑)。演じれば演じるほど、もっとレイジのことが知れるんだろうなと。

メインキャラクターは、レイジを含めて3名ですね。サブロウ、イツキ、どちらとの共演が楽しみですか?


どちらも同じぐらい楽しみですね。2人とも、レイジとはまったくテンションが違いますから、いい意味で差が出たらいいなと。サブロウに関しては、信頼し合っているバディのような雰囲気。イツキに関しては、ちょっとワンコ的な。イツキに引っ張られすぎないように踏ん張るレイジの雰囲気を出せたらと思っています。

完成版を聞くのがとても楽しみですね。特に頑張りたいシーンは?


レイジがビシッと決める「死を持て繋げ、黄泉国(ヨモツクニ)」とか。そういったところは、特に鮮明に映像やレイジの表情が伝わるようにしたいですね。あとは、毎回の冒頭の振り返り。冒頭部分だけ聞いても楽しんでもらえるように、最初のナレーションを意識しています。また、レイジは、あまり声を張るタイプではありませんが、その中での感情の起伏をうまく表現できればと思っています。

声と漫画、2つのメディアで作品を楽しんで

アニメや映画と比べて、オーディオブックならではの面白さや大変なことは?


アフレコとは違い、絵もなく、決められた尺もありません。早口にするか、ゆっくりにするか、すべて自分次第。どうすればレイジらしさが出るのか、考えながらできる面白さがあります。もちろん、アフレコでアニメーターの方や監督が作ってくださった絶妙な間合いに飛び込むのも楽しいですが、自分で考えることへの面白さを感じます。

キャラクターを組み立てていく、担い手としての役割が感じられます。


自分で組み立てる部分は、かなり大きいと思います。今回演じるのは1人のキャラクターですが、オーディオブックの場合、1人で複数の役を演じたり、小説をまるまる読んだりすることもあります。映像でも実写でもなく、声だからこそできる面白さがありますね。

音声メディアだからこそできること、これからの可能性について教えてください。


耳元で誰かがしゃべってくれているというのは、新しい情報収集のひとつだと思います。ぜひ皆さんに体験していただきたいですね。特に今回、原作は漫画ということもあり、普段視覚で楽しむものを、耳で取り入れてみたときの感覚を楽しんでもらいたいです。漫画の方が頭に入りやすい人、耳で聞いた方がストーリーをとらえやすい人、両方いると思います。もちろん、両方楽しんでもらえたらなお嬉しいですね。

LINEで配信された漫画を読んで、オーディオブックを聞いた後、また漫画を見たら声が聞こえてきそうな気がします。


そうなってもらえたらより嬉しいですね。声優としてはキャラクターの魅力をより底上げてできるような力添えができたらいいなと。作品もレイジというキャラクターも、より多くの人に愛していただけたら嬉しいです。

西山さんご自身もよくオーディオブックを聞かれているとか。


はい。家でストレッチや家事をしているときは、オーディオブックやラジオを聞くことが多いです。オーディオブックは、集中して聞くだけでなく、何かをしながら楽しむのもアリだと思います。僕の生活の中にもすっかり溶け込んでいますね。

西山さんご自身もよくオーディオブックを聞かれているとか。


はい。家でストレッチや家事をしているときは、オーディオブックやラジオを聞くことが多いです。オーディオブックは、集中して聞くだけでなく、何かをしながら楽しむのもアリだと思います。僕の生活の中にもすっかり溶け込んでいますね。

では最後に、改めて今回の作品に対する意気込みをお願いします。


原作、オーディオブックの台本の両方を読ませていただき、ファンタジックな部分がある分、余計なことを考えずに楽しめると思いました。しかも、毎回続きがとても気になる感じで終わるので、僕自身も作品に夢中になることができました。

今回オーディオブックという形でお届けするにあたり、僕の「楽しかった!」という気持ちを、皆さんにもお届けできたらいいなと思います。原作とオーディオブック、どちらも合わせて楽しんでもらえたら、とても嬉しいです。よろしくお願いします!

「声の仕事」の枠組みを超えたアウトプット

将来の夢のひとつが、漫画家だったとお伺いしました。


小学6年生の頃ですね。図工や美術の時間が好きで。ものづくりというか、何かをアウトプットすることがすごく好きでした。家庭科や技術など、クリエイティブな時間はとても楽しかったです。

当時から作品に対してこだわっていたことはありますか?


出席番号がずっと21番だったこともあり、21という数字に運命を感じていました。家庭科の授業で作るエプロンにも21の数字を入れたり、卒業工作のオルゴールにも21を描いたり。21世紀というのもありましたが、いろいろなことが重なり21にシンパシーを感じていましたね。

今もクリエイティブな活動を継続されていますね。


入江玲於奈さん、谷口悠さんと『大井町クリームソーダ』のユニットを始め、そのグッズをつくっています。ロゴやキャラクターを描いたり、使う画像も自分でレイアウトしたり。グッズ担当のような感じです。

これから挑戦してみたいグッズはありますか?


大量のシールを作りたいですね。あとは、ファッション的なキャップとか。『大井町クリームソーダ』でも、また別の形ででも作ることができたら楽しそうだなと。

学生時代の『21』のような、最近気に入っているモチーフはありますか?


レモンです。レモン柄が好きです。味というより見た目ですね。すごく爽やか、かつポップ。黄色のカラーも好きです。レモン柄があるとついつい手にとっちゃって、家の中にも、結構レモングッズがたくさんあります。

今、おっしゃっていただいた爽やかでポップな部分。ご自身にも通ずるところがあるのかなと。


え。そんなふうに言っていただけるなんて恐縮です。

(笑)。漫画とオーディオブック、グッズを含めたユニット展開のように、組み合わせの面白さで注目されているものはありますか?


僕、夏がすごく好きなんですよね。「夏×何か」というのは、すごく気持ちが上がる部分があります。夏とカレーとか、夏とレモンとか、夏と焼き鳥とか。湿った空気の中、焼き鳥の匂いがすると、夏の匂いだと感じる。でも、今年の夏はいろいろな情勢もあり、あまり夏を感じることができませんでした。そういう意味でも夏が恋しいなと思って、ビニールプールを買って、ベランダに置いて、足だけ浸かって。かき氷機を買ってかき氷を食べました。

ある意味、1人で夏をクリエイティブされましたね。ちなみに、好きなクリエイターさん、尊敬しているクリエイターさんなどはいらっしゃいますか。


北田瑞絵さんです。僕、柴犬がすごく好きなんですね。犬との暮らしを書きつつ、写真も載せられていて。本当に癒されるんです。犬が犬らしく、犬をまっとうしている素晴らしい世界があります。北田さんが紡ぐエッセイは言葉も美しく、四季を感じさせてくれる表現がすごく素敵で、本も買いました。東京の個展も行きましたね。すごく大好きなクリエイターです。

これから挑戦したいクリエイティブは「日常の切り取り」

これから演じてみたいもの、作品などはありますか?


ドラマのような日常的な作品にも興味がありますね。アニメだからできる世界観も面白いですが、「アニメなのに、これ完全に人間ドラマじゃん」みたいな。魔法もないし転生もしない、そんな作品にも興味があります。全くファンタジーではないけれど、人間関係がリアルに描かれているような作品。まるでドラマを見ているような作品には、興味がありますね。

最近、イメージに近い作品はありましたか?


和山やまさんの『女の園の星』です。文学的な言葉遊びが面白くて楽しかったですね。くすっと笑っちゃう日常で、こういう世界があったら素敵だなと思えます。

クリエイティブなものをインプットすることで、声のお仕事への意欲にもつながるイメージです。それから写真もお好きだとお伺いしました。


そうですね。写真は特に好きです。なんでも撮りますが、ポートレート、人を撮る方が多いですね。一時期フィルムのカメラにハマっていた時期があります。最近は『写ルンです』とか、使い捨てカメラを買って撮影することが多いかな。プリントしないとわからないことが楽しい。便利な世の中であえて不便を選ぶことで、心地よくゆったりとした時間を過ごせているような気がします。プリントしたりCD-Rに焼いてデータとして残したりして、友人に渡すこともあります。すごく喜んでくれますね。

『どうぶつの森』がお好きで、カメラ機能にもハマっているとお聞きしました。


はい。『どうぶつの森』では、世界の写真を撮ることができますが、島の中で動物を操ることはできません。「こっちに来てほしい」「こんな顔をしてほしい」と思っても、どうすることもできないので、ただひたすらカメラをスタンバイして待つんです。いい表情したときに、シャッターを切る。撮れたときは、もうガッツポーズですよ。

リアルのカメラも同じ。同じ表情、シチュエーションは二度とありません。人物を撮る楽しさと難しさに通ずるものがありますね。

クリエイティブが組み合わさった先にある感動

視点が変わると楽しみ方も変わりますね。作品に関しても、視点を変えて見ることはありますか?


『ゼロフラ』の場合だと、個別に収録するため、組み合わさったあとは、純粋に聞き手として、いちリスナーとして楽しむ感じです。僕の中で、ある程度イメージしている型はありますが、きっと新しい表現、自分にはなかった引き出しを感じることができるんじゃないかなと。オーディオブックをべつべつに録ることで、できあがりまでの楽しみが増えたと思います。

今までの作品の中で「これはいい意味で覆されたな」という体験を教えてほしいです。


SEやBGMがつくことで、こんなに印象って変わるんだなと思いますね。アフレコの場合も、台本にはSE、BGMなどと書いていますが、実際に入る音はわかりません。完成形のときに、僕も初めて知ります。素敵な盛り上がり、クライマックスの雰囲気がとてもよく出ている。導入部分を入り込みやすくしてくださっているんだとか、臨場感が出ているなとか、新たな感動がありますね。今回は、特に場面転換も多く、その前にBGMも変わるため、より楽しみです。

SEやBGMを作る方を含め、クリエイティブな世界で働く方たちのことは、普段どう感じていらっしゃいますか?


やっぱり作品を届けるためには、作品や原作を生み出す人、イラストを描く人、放送する人、撮る人、みんなのスケジュールを合わせてくれる人、他にもたくさんの人が関わってくれているからこそ、皆さんの元に届いているんだな、自分の表現をすることができているんだなと感じています。

この記事もそうですよね。いろいろな方の手が加わることで、皆さんの元に記事として配信することができる。これもひとつの表現だと思っています。僕は、撮影が好きです。みんなで作品を作ることが楽しい。カメラマンさんとの呼吸、どういうものを撮るのか、僕もすごく興味がありますね。いいものを作りたいとの思いで、一緒に動いて撮影している感じです。

写真集も出されていますよね。自分から提案されることもあるんですか?


「こういうシチュエーションで撮ってみるのはどうですか?」と言ってみることはありますね。あとは、結構自由に動いたときに、そのまま撮り続けてくれる方が好きです。勝手なんですけど(笑)。写真としての良し悪しはわかりませんが、とりあえずシャッターを切って、その空気感と共に形に残せるというのがいいなと思います。

クリエイトの引き出しを自分の中に増やしてみて

幅広く、クリエイトという意味で、今後挑戦してみたいことはありますか?


家具を作ってみたいです。今、置きたいものがあるんですが、自分が欲しいドンピシャの棚がなかなか見つからなくて。じゃあ自分で作ろうかなと。一から作るのが難しかったら、色を変えたりリメイクしたりするのもいいかなと。家の中の必要なものを自分で作ったり、自分好みに染めてみたりするのも面白そうだなと思っています。

先日、部屋の一角だけ、壁紙の色を変えました。薄い水色になって、まるで撮影スタジオみたいです。雰囲気もガラリと変わって、面白かったですね。

壁紙を変えようと思ったきっかけは?


壁の汚れが目立っていたんですよ。だから、なんとかしたいなと思って、上から重ねればいいかなと検索してみたら、こんなに手軽に買えて、簡単にできるんだと思って驚きました。また買おうかなと思っています。

また新しい趣味が増えるかもしれないですね。話を少し作品に戻して、声優としてのお仕事とシナリオライターさんのお仕事、似通っていると思う部分、違う部分を教えていただきたいです。


表現するという意味では同じものだと思います。表現方法としての違いがあるだけで、対する熱量は同じ。お互いが引っ張り合うことで、結果的に良いものを作れるんじゃないかなと思いますね。

声優の活動をしていて思うのは、人の声がすごく気になる。街中やお店に入ったときにも、いい声の人がいると「おっ」と思っちゃう。聞き入っちゃう。「こういうセリフを聞いてみたい」「こういう歌を歌ったら、どういう感じになるんだろう」とか、どういう発声の仕方をすれば、こういう声になるんだろうとか、つい聞き耳をたてていますね。

ありがとうございます。声優というお仕事の中で、創造性が膨らむ余地があると思うところはどこですか。


同じセリフでも、場面によって表現する内容は変わります。ラジオも同じ。例えば「夏」というワードがあったときに、ポジティブな印象を持っている人もいれば、ネガティブに感じる人もいる。だからこそ、表現することは自然と変わります。同じセリフでも、自分がどこを聞かせたいと思うかが、自分の個性になっていく。セリフひとつでも、キャラクターの思いを考えつつ、作りあげていく感じです。常に、自分の中の偏った意見に縛られすぎないようにしないといけないと思っています。

発想の上でのトレーニングとして、気をつけて取り組んでいることはありますか?


ベタですが、いろいろな作品をみることですね。映画を見終わった後、レビューを見るのも好きです。自分が感じた上で、他の人の感じ方を見ると、別の考察があったりしてすごく勉強になります。最近見たのは『ミッドサマー』。1回見て、興味をそそられて。自分が思ってもみなかった考察を書いている方がいて面白かったです。その考察を踏まえてもう1回見たいなと。

今回の作品も、受け取り方や誰に注目しているかによっても、話の軸が変わってきます。だからこそ、皆さんの感想は気になりますね。

最後に、クリエイターを目指す方たちにメッセージをお願いします。


まず、「すごく楽しいよ」と言いたいです。声優をやっていてすごく楽しいよ、と。僕は声優になりたくて高校を選んで、養成所に行きました。でも、今は「違うことも、もっとやっておけば良かった」と思います。部活に打ち込んだり、友達とふざけて遊んだり、勉強したり。声優になりたくて、声優の勉強をすることも重要ですが、声優になってからは、声優としての知識以外の部分、他の人生経験がすごく重要になります。

いろいろなキャラクターや人格になりきるので、自分の中にたくさんの引き出しを持っていた方がいいんじゃないかなと。そのためには、いろいろな人と接することが、一番必要なことだと思います。たくさんいる声優の中でも、自分の強みのようなものが、最初からあればいいですね。

もちろん声優一本というのも素晴らしいです。でも、あえて何か違うものも始めてみてもいいんじゃないですかね。楽器でも、スポーツでも、筋トレでも。もうひとつ詳しい分野を持つことで、声優としても還元されると思います。僕がこれからクリエイティブを学ぶとしたら…水彩絵の具でイラストを描いてみたいですね。

Profile

西山宏太朗


81プロデュース所属。

主な出演作は『学園ベビーシッターズ』鹿島竜一、『メジャーセカンド』佐藤光、『あんさんぶるスターズ!』深海奏汰、『A3!』皆木綴など。

また、10/7にデビューミニアルバム『CITY』をリリース。

オーディオドラマ概要

■内容


オーディオドラマ【零の欠片-ゼロフラグメント-】

第1譚「よもつくによりししゃきたる」

全7話配信予定

オーディオドラマへのアクセスはこちら!(外部サイト)

■CAST


美津宮零児:西山宏太朗

磐井三郎:八代拓

宗像樹:古賀葵

■配信先


ラジオクラウド(外部サイト)

■制作


Team CHARA/DNP/ラジオクラウド/アールアールジェイ

作曲:須佐誠

※配信予定日は予告なく変更になる可能性があります。

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