アニメイトタイムズ×FUN’S PROJECT 特別企画 vol.8 山口勝平さんに聞く、声優・表現者としての本質とは?【前編・デビュー、そしてターニングポイント】

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アニメ声優系ニュースサイト「アニメイトタイムズ」と、クリエイター共創サービス「FUN'S PROJECT」のコラボ企画!
さまざまな分野で活躍するクリエイターが語る「『つくる』楽しさ」を発信する特別企画、「クリトーク!」。

第8回では、1988年に声優としてデビューし「らんま1/2」、「名探偵コナン」、「ONE PIECE」など数多くの人気作品に出演している山口勝平さんが登場します。

前編では、山口さんが声優を目指したキッカケやデビュー後歩んできた軌跡の中で大切にしてきたこと、さらにファンに大人気のイラストについてもお聞きしました。

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山口勝平(やまぐち・かっぺい)
悟空所属。福岡県出身。1989年に『らんま1/2』の早乙女乱馬役で主演を演じる。その他の主な代表作に、『名探偵コナン』(工藤新一、怪盗キッド/黒羽快斗)、『ONE PIECE』(ウソップ)、『魔女の宅急便』(トンボ)などがある。

クリトーク!バックナンバー

第1回

かくりよの宿飯(やどめし)

前編

後編

第2回

東京喰種:re

前編

後編

第3回

重神機パンドーラ

前編

後編

第4回

夢王国と眠れる100人の王子様

前編

後編

第5回

岩井勇気のコントCDⅡ

前編

後編

第6回

株式会社 ボンズ

前編

後編

第7回

声優・木村昴さんに聞く、劇団の作り方と役者としてのバイタリィ

前編

中編

後編

第8回

山口勝平さんに聞く、声優・表現者としての本質とは?

前編

後編

第9回

数々の人気アニメ主題歌を手掛けるFLOW。その曲作りに迫る!

前編

後編

第10回

藤田和日郎先生が漫画家を目指した原点とは?

前編

後編

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役者からの転身は「何かしらチャレンジしたい」という思いから

─山口さんが声優を志したキッカケをお聞きかせください。

山口勝平さん(以下、山口)
声優を志したキッカケ...。実はよく覚えていないです(笑)。僕は元々役者になりたいと思って、東京に出てきたんですよね。小さい頃から漫画やアニメが好きだったので、声優に興味がなかったわけではないのですが、明確に職業として意識してはいなかったと思います。

ただ、東京に出てきた後は、肝付兼太さんが主宰していた「劇団21世紀FOX」に所属させていただいて、「ドラえもん」で先代のスネ夫(骨川スネ夫)を演じていたこともあって、ご覧になっている方もアニメ関係の方が多かったんです。

そこで、たまたま声優としての仕事をいただいた。それが声の仕事をはじめたキッカケなんです。

声優を目指したキッカケという意味だと、お仕事をいただいたということが一番大きかもしれません。

当時は、漠然と役者になりたいという思いがあって。光栄なことに舞台に出演させていただいて。このまま一生舞台役者のままでいるということもできたのですが、「何かしらチャレンジしたい」とも思っていたんですよね。

─19歳でご上京。23歳で声優としての道を歩み始めました。それからの山口さんはいかがでしたか?

山口
初めて声優として出演した作品は、「どんどんドメルとロン」の船員Aでした。この作品は、肝付さんがロン役で出演していたんですよ。僕は本当に一言二言くらいの役だったんですけどね。

─それから1年後に「らんま1/2」の早乙女乱馬役に選ばれています。

山口
実は名前のある役としては、早乙女乱馬がはじめてではなくて、その前に「魔女の宅急便」のオーディションも受けていたんです。本当はこっちが先に合格していたんですよ。でも、合格から収録まで半年くらい期間があったんです。

僕はその当時モブ役の経験しかなかったので、音響監督さんが、声優という仕事に慣れる意味で、いくつかのオーディションをご紹介してくださったんです。その中で「らんま1/2」と「ジャングル大帝」に合格したんですよね。

なので、世に出たのは「らんま1/2」が先なんですけど、実は「魔女の宅急便」が先にありました。

─一気に有名作品を掴んだのはすごいですね。

山口
僕らの世代はラッキーでした。当時と今とでは、そもそも声優になりたい絶対数が違うので。

当時って声優さんの数は500人くらいだったと思うんですよ。そこに年間、新人がでてきても1人〜2人。それが今は桁違いの人数になってます。

正直、自分が今の時代だったら多分デビューもできていないと思いますよ。

─流石にそれはないと思います(笑)。

山口
本当ですよ! ラッキーな時代だったなって思っています。業界全体が1人の新人を育ててくれるスタンスがあったので。今は正直業界全体が一人の役者を育てる時代ではなくなっていますから。

そして、今はいろいろなジャンルの壁も曖昧になってきているので。

─ジャンルの壁ですか。

山口
そうです。以前は、映画に出ている俳優は映画にしか出演しない、テレビドラマには出ない。歌手は歌を歌う。モデルはモデル。それぞれのフィールドで価値を発揮していた時代です。

今はその垣根がなくなっていますよね。インターネットの普及により多様化が進み、いろいろなものを兼ね揃えなくてはならなくなりました。

極端な話、昔は声優さんにビジュアルの良さは求められていませんでしたから(笑)。

─「声優グランプリ」で初めて顔をお見かけする時代でしたね。

山口
アイドル性や多様性を求められているので、今の若手は大変だと思いますよ。今、人気が出ている方たちはジャンルの壁を超えたポテンシャルを持ってデビューしているので、本当にすごいと思いますね。
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山口勝平さんのターニングポイント

─山口さんのターニングポイントとなった作品や出来事などをお聞きしたいです。

山口
大きくは「らんま1/2」の早乙女乱馬ですね。この役がなければ声優としてはやってこれなかったと思います。ただ、僕は演じる役のすべてにターニングポイントがあると思っているんです。

大きく進路が変わるのか、少し変化があるかという違いはあるにせよ、いろいろな役と出会うことで、それぞれのターニングポイントがあります。それは役という意味もありますし、環境という意味もあるんです。

新しい人と出会うことで自分の歩く道も変わってくる。

例えば、デビュー直後の「らんま1/2」は女性の出演者が大半でした。林原めぐみさんや日高のり子さん、高山みなみさん、井上喜久子さん、佐久間レイさん、鶴ひろみさん。乱馬の周囲に女性キャラが沢山登場するので、当時僕も若かったこともあり、スタジオの中はお姉さんばかりでした。

それから1年が経って、「キャッ党忍伝てやんでえ」に飛び込んでみると、今度は男所帯。もう荒っぽい兄貴ばっかりみたいな(笑)。

現場、現場で環境は大きく違います。この中で、自分はどのような道を進めばいいのかについて、考えていた気がしますね。

─それぞれの環境に身を置くチャンスを掴むことでターニングポイントが生まれ続ける、と。

山口
僕は本当に幸運で。自分がやりたいと思った役を演じられることが多かったんです。

「キャッ党忍伝てやんでえ」のヤッ太郎みたいなキャラクターは性格も絵も大好きで。そういう風に思えるような役と出会うことができました。

ターニングポイントという意味だと、高橋留美子先生の「犬夜叉」もそうです。再び、先生の作品で主役を演じた時に10年前の自分を振り返ることもできましたし。

「今、自分は声優としてどれくらい成長したのだろう」そういったことを振り返るいい機会に恵まれもしました。

─「ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日」では草間大作を7年間演じていました。

山口
そうですね。大作くんも大きいです。最初から長期間収録するということは聞いていたんですよ。12歳の大作くんを演じ続けるということに対して、僕は常に挑戦する意識を持っていました。大作くんを演じきったことが、自分の中でも自信につながってきたり。

僕は小さく、小さく曲がりながら、変化をしながらここまで幸運なことに声優という仕事を続けてきた気がします。

順風満帆というのは、自分で使う言葉では無いのですが、出会う役という意味ではとてもそういう風に思っています。

─順風満帆に物事が進んでいる方と、そうではない方がいます。ここの違いについてどう思われますか?

山口
順風満帆に行っていると周りに思われている方でも、実際は違ったりするものなんですよ。これからクリエイターを目指す方たちにとっては、「自分の人生は順風満帆だ」って思えるくらいの気持ちで居たほうが絶対にいいですし、この考え方はとても大切です。

物事をプラスに考えられる能力は職種を問わず大事だと僕は思っています。

本当はそうじゃないと思っても、自分の中でハッタリをかませる勇気だったり。自分の中で納得感が出るように、言い聞かせていく力だったり。

すべてをプラスに転換すること。そういう風に考えている方が人生は楽しいですし、人生がいい方向に回ったりもするんですよ。

自分がマイナスなことを考えていると、なぜか上手く行かなかったりすることってあるじゃないですか。 僕は特にクリエイター、新しいものを作り生み出していく方には「プラスに物事を考える力」を持っていただきたいと思いますね。
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ダメ出しやオーディション結果に流されないプラス思考

─山口さんはデビューから31年が経ちました。役者、声優として壁にぶつかった時にプラスに考える力はどうやって身につけていったのでしょうか。

山口
そうですね。役を演じる上での壁は絶対的に存在しているものです。それをどうやってクリアするのかと聞かれれると、自分が努力するしかありません。

僕も役を演じる以外の壁にもたくさんぶつかって来ました。順風満帆だとは口に出しつつも、常に壁に当たってはいるんです。

「役者の仕事とはひたすら目の前の壁を超えること」だと僕は思っていて。ただ、ここで大切なのは「壁を超えることが目的ではない」ということです。

常に自分との戦いは続いています。怠けたいなって思う時は当然ありますし。そう思った時は、怠けちゃってもいいんですよ。バランスを取ることが大切だと思いますね。

─山口さんが自分のテンションを上げて「これから頑張るぞ!」という時にはどんなことを考えていたりするものなのでしょうか。

山口
シンプルに楽しいことを考えてます。重い腰を上げるまでが大変で、はじめてみると楽しかったりするんですよね。結局楽しめないと続けられないと思うし。楽しめないとつらいだけになっちゃうんですよね。

芝居をすることがつらいと思ったら、それはもう役者に向いていないということではないのかなって。

つらいこともひっくるめて楽しんで好きでいられる。

いいところばっかりではなくて、思い通りになることなんてほとんどないです。僕自身1割あればいい方だと思っています。

「どんなことも、そんなもんなんだ」と開き直るというか。神経図太く振る舞えるようになると、少し楽になれるかもしれません。

つらい時でも、テンションが低いときでも明るく振る舞える強さは大切だと思います。

─人生って上手く行っていない時は、複雑だなと思って、調子がいい時はシンプルに感じますものね。

山口
そうなんです。対人関係でも上手く行っている時は、何の疑いもなく楽しくいられるんですよね。でも、何かマイナスな部分が自分に芽生えると、ちょっとしたことに疑問を感じちゃったりとか。そうなっている自分も嫌なんですけど。

あの人に嫌われているんじゃないかな?なんて考え出しちゃったらキリがないじゃないですか。でも、意外と相手は気にしていなかったりとか。なので、あんまりクヨクヨしないということですね。

そもそも思い通りになることなんてほぼないから、クヨクヨ考えずに、次のチャレンジをはじめる。これが大事だと思いますよ。

─一つの事象に囚われすぎないことが大切だと。

山口
失敗したことを反省しても後悔してはいけません。オーディションでも落ちると自分が全否定されたような気分になっちゃうんですよ。

でも、実際はそんなことはないんですよね。本当にたまたまなんです。 キャスティングのバランスやいろいろな角度から検証した結果、縁がなかった。それだけなんですよ。選ばれなかったからと言って、何一つ否定されているわけじゃないんです。

─ただ、そう思えるようになるまで大変ですよね。実際、山口さんのこれまでを振り返ってみていかがでしょう。

山口
これは日本のお国柄だと思うんですけど、褒めるを美徳としない文化があるというか。例えば、お芝居の世界にも“ダメ出し”って言葉がありますよね。演出家から演技に対して、指摘が入る時間を指すのですが、言葉のチョイスが日本っぽいなって僕は思うんです。

ただ、同じことをやっているのですが、海外の演出家になると“チャレンジ”って言葉に変わるんです。駄目ではない、こういうことにチャレンジして欲しい。さらに良くするために、新しいことにチャレンジして欲しい、と。

こうして比べてみると、“ダメ出し”ってフレーズだけで「お前は駄目だ!」って否定されている気分になっちゃいますよね。そんな感じしませんか?

─分かります(笑)。

山口
これやっぱりお国柄なのかな(笑)。なので、フレーズに惑わされずに、プラスに転じる力が大切なんです。

先程のプラスに転じる力のお話ですね。「ここをなくしたり、正したりすれば僕はパーフェクトなんだ」と自分で思うことができるか?ということ。

僕がずーっと思っているのが、ダメ出しの数だけイイところを褒めてほしいって(笑)。

─その育てられ方はとても素敵ですね!

山口
そうでしょ?もちろん、人の言うことに耳を傾けることはものすごく大切です。周りからの情報をシャットアウトしてはいけません。その指導や指摘はあなたのためだったり、求めている水準に達していないから発生しているわけですから。

修行や下積み時代ってやっぱり、奥歯をグッと噛み締めて我慢をすることも大事だったりするんです。経験を積んでいくと、自分にとって必要な情報を見極めることができるようになります。そうした考え方にたどり着くためにも、人から言われたことには、キチンと耳を傾けなくてはいけないんです。

ですので、指摘されたことをプラスに変換し、どんどんチャレンジしていけば自ずと結果も付いてくると思いますね。ただし、目指す方向のビジョンをキチンと持たなければいけませんよ。
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好きだから絵を描く

─貴重なお話ありがとうございます。少し話題が変わりまして、山口さんは毎週、「ONE PIECE」の収録後や「名探偵コナン」で演じている工藤新一の誕生日にはイラストをアップしています。ちなみにイラストはいつ頃から書かれていらっしゃったんですか?

山口
これは本当に趣味ですね(笑)。小さい頃から仮面ライダーやタイガーマスクの絵を書いたりはしてましたけど、完全に我流なんです。

はじめて商業誌でイラストを描いたのは、アニメ雑誌だったと思います。仕事というよりも、ご依頼いただいたので描いていたということです(笑)。

─「ONE PIECE」のホワイトボードはいつからスタートされたのですか?

山口
もともとは「ONE PIECE」のホームページがリニューアルする時にいくつかコーナーを作りたいというお話があったんです。

その中で、ホワイトボードでスタジオの雰囲気を伝えようと。今、見返してみると初期の頃は言葉も多かったんですよね。それが、段々イラストがメインになってきて(笑)。

文章と絵を書くのどっちが好き?と言われれば僕は絵を描くことの方が好きなので。だからホワイトボードいっばいにイラストを描こうって。最初は2014年の671話なので、もう4年以上も描いているんですね。

これは裏話なのですが、今はちょっと出番がないので、アフレコの時に時間がたくさんあるんです。だからしっかり描き込んでありますね。イラストがちょっと手抜きな時は出番があったのだと察してください(笑)。

─裏話までありがとうございます(笑)。

山口
でも、半強制的でもイラストを描く時間があるのはいいことですよね。やっぱり知らないうちに描き慣れていくというか。意外と良い訓練にはなっている気がします。

─ちなみに山口さんが絵を描く時に使用している道具についてもお聞きしていいですか?

山口
最近はiPad PROを使ってますよ。アプリは「CLIP STUDIO PAINT」ですね。皆が使っていたので、プロっぽいかな?と思って使い始めました。僕、プロじゃないのにプロ使ってるみたいな(笑)。

でも、ちゃんとアプリを入れると使い倒さないと損じゃないですか。そういった環境を整えていくのもスタートするタイミングでは大切かもしれませんね。

─iPad PROの前はアナログでも描いていたんですか?

山口
もちろんですよ!コピックでムラが出ないように描く方法とか勉強してましたもん。

アナログにこだわったりしたらカッコいいかなと思ったりもしたんですが、結局デジタルになっちゃってますね。

違う違う!僕はイラストのプロじゃない。声優なんだってね(笑)。
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山口勝平(やまぐち・かっぺい)
悟空所属。福岡県出身。1989年に『らんま1/2』の早乙女乱馬役で主演を演じる。その他の主な代表作に、『名探偵コナン』(工藤新一、怪盗キッド/黒羽快斗)、『ONE PIECE』(ウソップ)、『魔女の宅急便』(トンボ)などがある。

クリトーク!バックナンバー

第1回

かくりよの宿飯(やどめし)

前編

後編

第2回

東京喰種:re

前編

後編

第3回

重神機パンドーラ

前編

後編

第4回

夢王国と眠れる100人の王子様

前編

後編

第5回

岩井勇気のコントCDⅡ

前編

後編

第6回

株式会社 ボンズ

前編

後編

第7回

声優・木村昴さんに聞く、劇団の作り方と役者としてのバイタリィ

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中編

後編

第8回

山口勝平さんに聞く、声優・表現者としての本質とは?

前編

後編

第9回

数々の人気アニメ主題歌を手掛けるFLOW。その曲作りに迫る!

前編

後編

第10回

藤田和日郎先生が漫画家を目指した原点とは?

前編

後編

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