連載第3回重神機パンドーラ-前野智昭×河森正治-前編

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アニメ声優系ニュースサイト「アニメイトタイムズ」と、アニメ、マンガ、ゲームなど、日本が誇るエンタメコンテンツの魅力を発信し、クリエイターやコンテンツホルダーとファンをつなぐサービス「FUN'S PROJECT」のコラボによる特別企画。
前編では、一つの作品を共に作りあげている声優とクリエイターのスペシャル対談を通して、作品やキャラクターの魅力などを探っていきます。
また、「FUN'S PROJECT」限定公開の後編では、エンタメ業界の最前線で活躍するお二人のこれまでの歩みについてもインタビュー。
クリエイターや声優を目指している皆さんにとっては、より実践的内容となっています。
第3回となる今回、お話を伺ったのは、好評放送中のアニメ『重神機パンドーラ』の河森正治総監督と、同作で主人公のレオン・ラウ役を演じている声優の前野智昭さんです!

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Profile

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前野智昭(まえの・ともあき)
株式会社アーツビジョン所属。茨城県出身。2008年に、TVアニメ『図書館戦争』の堂上篤役で、初の主人公を担当して注目を集める。
その他の主な代表作に、『プリティーリズム・レインボーライブ』(速水ヒロ)、『ネト充のススメ』(小岩井誉)、などがある。

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河森正治(かわもり・しょうじ)
富山県出身。大学在学中から、メカデザイナーとして頭角を現し、20代初期でTVシリーズ『超時空要塞マクロス』に登場する"バルキリー"をデザイン、 実機のようなリアルな戦闘機がロボットに完全変形するメカニズムを世に送り出し、可変ロボットデザインの第一人者となる。その他の主な代表作に『マクロスF(フロンティア)』『創聖のアクエリオン』『AKB0048』、などがある。

クリトーク!バックナンバー

第1回

かくりよの宿飯(やどめし)

前編

後編

第2回

東京喰種:re

前編

後編

第3回

重神機パンドーラ

前編

後編

第4回

夢王国と眠れる100人の王子様

前編

後編

第5回

岩井勇気のコントCDⅡ

前編

後編

第6回

株式会社 ボンズ

前編

後編

第7回

声優・木村昴さんに聞く、劇団の作り方と役者としてのバイタリィ

前編

中編

後編

第8回

山口勝平さんに聞く、声優・表現者としての本質とは?

前編

後編

第9回

数々の人気アニメ主題歌を手掛けるFLOW。その曲作りに迫る!

前編

後編

第10回

藤田和日郎先生が漫画家を目指した原点とは?

前編

後編

河森総監督のさまざまな作品に影響を受けた前野さん

─前野さんは河森正治総監督の数々の作品に影響を受けたそうですね。

前野智昭さん(以下 前野)
もちろんです! 『マクロス』シリーズも『アクエリオン』シリーズも拝見していましたし、実際にゲームも買ってプレーしてました。『マクロス デジタルミッションVF-X』とか。
河森正治総監督(以下 河森)
そうなんですか? 結構難易度高かったでしょう?
前野
はい(笑)。すごい難しかったですが、楽しませていただきました。河森さんの作品では『マクロスプラス』が特に好きで。ゴーストと戦うシーン、ネット上で言われているところの「伝説の5秒」を見た時、めちゃめちゃ鳥肌が立って。「こんな表現をアニメーションでできるんだ」と驚かされました。こんな描写をできる河森さんという人は偉人だ! と子供心に思うほどの刺激と衝撃を受けました。
河森
ありがたいですね。『マクロスプラス』を制作するにあたって、(特技監督の)板野一郎さんと一緒にアメリカの「エアコンバットUSA」に赴いて、操縦訓練を受けて、お互いに違う機体に乗って、操縦桿を握って模擬空中戦をやりました。
前野
そうだったんですか!?
河森
その時のG(重力)のかかり方や、立体空間内での機動等、とても参考になりました。また、当時もAIがどんどん進んでいて、遠くない未来に無人機ばかりになるだろうなとか、CGの時代になるだろうということは読めていたので、最後の有人戦闘アニメをやろうと。前野さんが挙げてくださったシーンも「この数秒に賭けよう」とよく話していました。
前野
本当にすごかったです。だから『重神機パンドーラ』のタイトル発表会で、河森さんが「イサム・ダイソン(『マクロスプラス』主人公)以来の青年の主人公」とおっしゃっていたのを聞いて、「マジか!?」とすごくドキドキしたのを覚えています。さらに現場に行ったら(石塚)運昇さんもいらして、「ガルドがいる!」とちょっとしたミーハー心も(笑)。
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─「河森監督の作品を見てました」とよく言われることが多いのでは?

河森
そう言っていただけることが増えてきて、ありがたいような、いつの間にこんなに長くやっていたんだろうと不思議に思うこともあります(笑)。いろいろな方に支えていただいて、40年近く続けてこられたことは感謝しかありません。

夢実現のチャンス!自分の演技にマッチするキャラに気合が入ったオーディション

─前野さんは河森監督のデザインしたメカニックを操縦することが夢だったそうですね。

前野
いつかは夢を叶えたいと思っていました。実際に河森さんのいろいろな作品のオーディションを受けさせていただいたんですけど爪痕を残すことができなくて(笑)。今回の『重神機パンドーラ』ではオーディション時にいただいた資料を見た時、レオンは自分の等身大の声のトーンで表現できるキャラだなと思って、気合が入りました。
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河森
それは僕にも伝わってきました。レオンはやたら専門用語をしゃべるし、日常生活はまったくダメなもっさりもさもさな状態なのに、研究について話す時はすらすらしゃべる。また、かつカッコいい時にはそれなりに凛々しくなって、キメる時には叫んで、といろいろなことを表現していただく必要がある。ですから、最初から難しい役だということはわかっていたつもりですが、実際にオーディションを進めてみて改めて難しい役と感じました。
前野
本当に難しかったです(笑)。
河森
たくさんの方に受けていただきましたが、カッコイイところはキマるけど、情けないところがうまく出なかったり、ほのぼのさとカッコよさが両立していないケースが多かった時に前野さんの声と演技を聴かせていただいて、「本当に適任だ」とホッと胸をなでおろしました。
前野
ありがとうございます。ディレクションでも「研究者のイモ虫みたいに」と言われて。こんなディレクション、なかなかないですよね(笑)。

テクノロジーの急激な変化と人類の歴史の転換期をテーマにした『重神機パンドーラ』

─前野さんが演じて感じた『重神機パンドーラ』の印象は?

前野
2031年という近未来に、次世代エネルギー装置の量子リアクターの暴走により、絶滅の危機を迎えた世界が舞台という現実世界でも起こりうるのではないかという設定で、身の回りにいる生物たちが独自に進化して、人類を脅かす存在になるのもリアルだなと思いました。またレオン達が乗り込む可変型のメカ、MOEVもそれぞれ個性があったり、乗り込む側も特性が求められたりするのもおもしろいなと。
それにレオンがカッコイイだけの主人公ではない部分にも魅力を感じていて。情けないシーンやカッコイイシーンなど広い振り幅で演じることができるし、1話ごとにさまざまな感情を出せるので、こんなに役者として楽しめる作品はなかなかないと思うし、レオンを演じることができてうれしかったです。
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─監督は『重神機パンドーラ』はどんなテーマやコンセプトで制作されているのでしょうか?

河森
時代の進化がどんどん進んで、その進み方の速度が急激なカーブを描いています。テクノロジーの進化も以前は人間をサポートする側だったのに、今では人間を凌駕するところまで来ている。人類が生態系の頂点と言われたところから脱落しつつあるんじゃないかと。大きな意味での人類の歴史が変わりつつある、そんな時代を描いてみたいと思ったんです。でもそのままAIで描いてしまうとよくあるSFの、いつものパターンになってしまう気がしましたし、クライアント側からのオーダーもロボットもの、アクションもののテイストとのことだったので、B.R.A.Iという敵対する進化生物を作り上げつつ、「人間らしさって何だろう?」という部分を掘り下げながら進めていけたらと。

作品の鍵となる「量子リアクター」と「契約」

─作中に登場する量子リアクターという次世代エネルギーは、現代のエネルギー問題にもつながっているところもリアルですね。

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前野
確かにそうですね。
河森
2001年に『地球少女アルジェナ』を制作した時にも放射能や環境問題などその時に気になっていたことをテーマにしていますが、ひとつ間違えば非常に危険なテクノロジーが増えていると思うんです。リアクターもそうだし、AIや情報プライバシーに関しても、既に臨界点を超え始めている、倫理が追い付かなくなってきている気がします。

─また本作では「契約」も1つのキーワードになっています。

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河森
日本人は以心伝心や口約束を重んじていて、それはいい面でもあるけど、マイナスな面もあるかもしれないと。でも海外の人達と仕事をすると契約という言葉がよく出てくるんですよね。この作品は世界中にも配信していく前提でしたので、契約をテーマに入れてみるのもおもしろいかなと思いました。でもガチガチな契約では感情のドラマになりにくいので、家族契約にしてレオンとクロエの感情を支える部分に持っていけたらいいなと。
前野
レオンとクロエとの関係性を考えるとすごく重要なものだということがわかりました。

独特なメカデザインはブロックで何種類も試作。特撮メカ風に

─B.R.A.IやMOEVなどの独特なメカニックデザインのポイントは?

河森
荒廃した世界ですし、地形もイレギュラーなところで戦うことも多いので、MOEVは装甲車的なイメージを強めています。敵のワンと戦うために飛行メカにしています。アニメーションのメカというよりは、今はフルCGでの描写にこなれてきましたので、特撮メカ風の実写に登場しても似合うような、アニメと実写の間を狙ってみました。
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前野
MOEVのデザインもカッコイイなと思います。でもレオンのMOEVはどうしてあの形になったのか、ずっと気になっていて。
河森
あれは玩具のブロックを使って、何種類も試作して。肩に前輪がありますが、他の部分に行くパターンも作ったり、最後は前輪に腕が装着されて変形するバージョンと、独立したバージョンと両方を試してみて、強度の都合もあって現在の形になりました。採用されなかったバージョンは可動性はおもしろいけど、実際におもちゃとして作ったら関節がもたないだろうと。
前野
なるほど!

レオンは『マクロスプラス』以来の青年主人公。それゆえの演じる葛藤と苦悩

─前野さんがここまで演じてきたなかで印象的なシーンを挙げていただけますか?

前野
毎週印象的なことが起こるので選ぶのは難しいんですけど、やっぱり1話が一番印象に残っています。物語の主軸であり、ここから始まったという部分もありますが、現場では自分が用意してきたものをまずテストで出して、河森さんや音響監督とディスカッションさせていただいて、キャラの方向性を細かく決めていった経緯もあるので、印象に残っています。こんなに情けなくて、カッコ悪くていいのかなって。
河森
ヒーロー像としてはね(笑)。
前野
イサム・ダイソン以来の青年主人公ということもあって、熱さみたいなものも残したほうがいいのかなと思ったんですが、研究者としての熱はあるけど、いち人間としてはもっさりな感じで、というところから始まったので。オンエアされるまで不安でしたが、PVや1話の映像を見せていただいたら、カッコ悪いレオンがところどころでカッコよく見えるシーンがあって。それで「あのレオンでよかったんだ」と安心できました。
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河森
確かにユニークな主人公ですからね。
前野
メカに乗って戦うというと、もう少し勇ましかったり、カッコよさを、皆さん想像されると思うので、そこから逸脱してしまうのが怖い部分があったと思うんです。自分が『マクロスプラス』などいろいろな作品を見て、培ってきた主人公像がきっとあって。そこからはずれたキャラを主人公にして、ちゃんとカッコよく見せられるのは、制作スタッフの皆さんが緻密に作ってくださった世界観があってこそだと思うので、今回いい経験をさせていただいたと思います。
河森
今回、チームものにしようと思っていたことも1つで。レオンが最初から強いと万能になってしまって、他のメンバーが出なくても解決できてしまうので、話数によって例えばクイニーがメインだったらレオンはサポートにまわるとか、そういう構成にできないかなと思ったことも大きいです。

─2クール作品なので、各キャラのバックグランドもしっかり描けているところもいいですね。

河森
シリーズ構成の根元(歳三)さんとも話し合って、海外ドラマだと1話45分くらいの尺があるから群像劇が描きやすいけど、TVアニメは20分しかなくて群像劇が描きにくい。だったら、開き直って2話で1パッケージといった考え方にしました。新しい試みだったかなと思っています。

前野さんから河森総監督へ質問!

─前野さんから監督に聞いてみたいことはありますか?

前野
いろいろな着眼点をお持ちな方ですが、例えば作詞家の方は思いついたフレーズがあったらすぐにメモをすると聞いたことがありますが、河森さんも同じようなことをされることはあるんですか?
河森
メモはしますね。メモしないと忘れちゃうので。たまに数年前のメモを読み返すとおもしろいですね。思いついた当時はいくつかの理由で使えなかったけど、今なら使えるなというものも結構あります。
前野
もし今、過去の作品、例えば『マクロス』などを見直したらどんな心境になるんでしょうか?
河森
『マクロス』の場合、久しぶりに見るとしみじみするところはありますね。「ああ、こんなことやってたんだ」と。見返す時によく陥るのが、最新作をやっていて、「やった! 思いついた!」とコンテを書き始めるけど、『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』や『マクロスプラス』をたまに見返すと「あっ、同じカット割してる!」って。進歩してないなと情けなく思う時もたまにあります(笑)。
前野
でも感性が当時から変わられていないという証拠でもあり、それが監督の強みでもあるのではないでしょうか? あと可変のアイデアも素晴らしいと思います。
河森
ひねって、ひねって、ひねって。
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前野
どんな時に思いつくんですか?
河森
子供の頃から絵を描くより模型を作るほうが好きだったので、ブロックや模型を作って。頭で考えるというよりも自然と手が動いて。「こっちのほうがいいな」みたいな。
前野
それは『マクロス』時代から?
河森
そうですね。でも『マクロス』の最初のほうはブロックを使っていなくて、ペーパーモデルや発泡スチロールでやっていたんですけど、作って直すトライ&エラーが大変で。そこで子供の頃によくブロックを使っていたことを思い出して、切り替えました。

─デザインはコンピューター上で描くことも容易になりましたが、今もブロックなんですね?

河森
コンピューターで描くとパーツ同士の接触判定が難しいんです。各パーツは思いつきやすいんですけど、変形途中でひっかかってしまうとか、計算がしにくくて。
前野
未知の世界ですね。

戦闘はより激しく、でもほのぼのも忘れず。最後まで挑戦し続ける作品

─『パンドーラ』はいよいよ終盤に入っていきますが、今後の見どころや注目ポイントを教えてください。

前野
死闘に次ぐ死闘なので、レオンをはじめ、キャラクター達が今後どのようになっていくのか、見ている皆さんも楽しみにしてくださっていると思いますが、各キャラがどんなギリギリの戦いをどのように繰り広げていくのか、そしてネオ翔龍と世界の行方、レオン達がどんな結末にたどり着くのかを最後まで見届けてください。
河森
ジークも本性を現し牙を向いてきて、レオン達を取り巻く状況もさらにシビアになります。激しい戦いが繰り広げられ、誰が生き残れるかというテンションにも……。
前野
えっ?!
河森
でもスキあらば、ほのぼのも忘れずという感じで。ずっと緊張しているのは耐えられない性分なので(笑)。私たちの挑戦と想いが詰まったこの作品を最後まで楽しんでください。

─では、後編ではアニメに携わるお仕事についたきっかけなどをおうがいしていきますので、引き続きよろしくお願いします。

河森・前野
お願いします。

【取材・文=永井和幸 撮影=相澤宏諒】

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前野智昭(まえの・ともあき)
株式会社アーツビジョン所属。茨城県出身。2008年に、TVアニメ『図書館戦争』の堂上篤役で、初の主人公を担当して注目を集める。
その他の主な代表作に、『プリティーリズム・レインボーライブ』(速水ヒロ)、『ネト充のススメ』(小岩井誉)、などがある。

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河森正治(かわもり・しょうじ)
富山県出身。大学在学中から、メカデザイナーとして頭角を現し、20代初期でTVシリーズ『超時空要塞マクロス』に登場する"バルキリー"をデザイン、 実機のようなリアルな戦闘機がロボットに完全変形するメカニズムを世に送り出し、可変ロボットデザインの第一人者となる。その他の主な代表作に『マクロスF(フロンティア)』『創聖のアクエリオン』『AKB0048』、などがある。

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第1回

かくりよの宿飯(やどめし)

前編

後編

第2回

東京喰種:re

前編

後編

第3回

重神機パンドーラ

前編

後編

第4回

夢王国と眠れる100人の王子様

前編

後編

第5回

岩井勇気のコントCDⅡ

前編

後編

第6回

株式会社 ボンズ

前編

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第9回

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後編

第10回

藤田和日郎先生が漫画家を目指した原点とは?

前編

後編

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